呉智英の「日本衆愚社会」小学館新書 今年8月刊 を読んだ。『週刊ポスト』の連載コラム(18年6月1日号まで)とそのほかの原稿をもとにしたものである。各論が短く読める。
「白人系大統領オバマ」では、オバマ大統領は白人と黒人の混血なのだから、白人系でもある。アメリカで彼が黒人系と呼ばれるのは、アメリカでは大統領が白人が当然だという通念があるからだ。混血という言い方も問題だ。「ハーフ」「ダブル」などと言いかえている。「あいのこ」でいいではないか。
外国人労働者の拡大が問題になっている。建築や介護などの現場で人で不足が深刻だ。しかし国内の労働力の偏在を改革することで乗り切れるはずだ。そうでないと、やがて反乱がおきるだろう。それは国内に植民地を作るようなものだから。
朝日新聞にむかし、与那国島に女性の『酋長』がいたという記事が出た。「酋長」は30年ほど差別用語として禁止されていたが、その差別が解けたような気がするという。「酋長」が禁止されたため、代理に「首長」が使われたが、わざとらしい言い換えだ。
日本学術会議が軍事目的での科学研究を行わないという方針を確認したという。愚かとしか言いようがない。平和を守り戦争を防ぐためにこそ軍事研究は万人に開かれなければならない。原発批判の安西名誉教授は原子力工学を専攻していた。それ故にこそ原発批判に説得力もある。
そのほか、はっとさせられる指摘に満ちている。

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