国谷裕子の「キャスターという仕事」岩波新書 今年1月刊 を読んだ。23年間NHKの「クローズアップ現代」を降板するにあたってその間の思いを語っている。
30分の番組を作るのに取材が終わってから編集作業に5,6日からる。それから「前日の試写」と「当日の試写」があり、編集責任者から厳しい注文が相次ぎ、それにキャスターとしての国谷さんからも発言される。それを経て放送された。
テレビは「視聴者に感情の共有化を促してしまう」という危険がある。彼女は「ものごとの後ろに隠れている事実を洞察する力」を大事にしていた。
2015年の12月にこの契約を打ち切ることが告げられた。理由は番組をリニューアルし、キャスターも一新するということだった。上層部からの指示に対して、番組のプロヂューサーたちは、夜10時からの放送になっても、キャスターは変えずに行きたいと最後まで主張したと、後で耳にした。
ここ2,3年、NHK内の空気にも変化が起きてきたように思う。例えば特定秘密保護法案は取り上げられず、安全保障関連法案は参議院を通過した後にわずか1度取り上げるのにとどまった。
トランプ大統領がよく使う、民主主義を脅かす post-truth 「ポスト真実」がはやりつつある今こそ、ジャーナリズムがしっかりしなければならないという。

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