岩波新書の『日本語と時間』藤井貞和著 2010年12月新刊 を読んだ。
かつての日本語には「つ、ぬ、たり、き、けり」など多くの過去を表わす助動詞があったが、現代はみな「た」一通りになってしまった。明治時代の言文一致のためだ。
過去の助動詞が持っていた意味をたどり、その微妙な意味のちがいを考える示唆に富んだ本だ。
参照する本は山田孝雄や時枝誠記を初め中島義道、イエスペルセン、細江逸記、大野晋など広範囲にわたる。大野晋氏のドラヴィダ語との関係も考えるのはちょっとどうかと思うが。
「もの」と「こと」の関係とか、日本語のアクセントは高低アクセントだったのが次第にアクセントのない言語になっていったとか、アイヌ語は単数・複数の数え方がちがうとか、いろいろ広い範囲からものを考えている。
最新の研究まで参照していて、現在著者が考えたところはここまで、ということを示したものだ。

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