2008/6/20
諦めたように両手を挙げた。
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「ただし」と前置きをして続ける。「残念ながら、彼女には『目が覚めたら勝手に出っててくれ』て言っちゃったからね。僕が帰って彼女がいなかったら助けようがないんだからね」
「そんなの簡単じゃん」
滝沢が、何言ってんだ?という顔で答える。
「あのコ、近所なんだろ?家判ってるならいつでも顔見られるじゃん」
……そうだった。
って、いやそうじゃないんだけどね。僕は本当に彼女の名前も住所も知らないんだけどね。
などと今更に言えるはずもなく、自分でついた下手な言い訳につっこみを入れたくなった。
「――とにかく、帰ったらまた連絡するから、今は自習自習」
朝の一時限目から話す内容じゃないよ……。
しかし、彼女が朝日奈たちを受け入れてくれるかは甚だ疑問だ。彼女にはきっと彼女の領域、テリトリーがあって、彼らの侵入を快く思わないだろう。彼女の中心はドラッグだ。ドラッグを否定する人間はまず許容されない。仲間も恋人も親も必要ないかもしれない。ドラッグが全てならその他は排除しても困らない対象になる。
それでもあいつらのことだからどうにかして接点を持とうとするんだろうなぁ、と考えたところで腹の虫が栄養をよこせと訴えた。モーニングを食べ損ねたからな……机の奥から非常食を取り出し、教師がいないのをいいことにぱくつきながら課題に取り掛かる。
栄養を補助するだけのそれは、朝からゆったりとした気分で食べるモーニングには比べ物にならなかった。昔はこれで1日凌いだことだってあるのに、人間というのは貪欲な生き物だ。生きる為だけに食べていた食事はおよそ食事とは言い難いモノばかりだったはずで、昔の僕からすれば時間をかけて食事を摂るなんて考えもしなかった。誰かが淹れてくれた紅茶を飲み、作られた食事を時間と共に取り込んでいく。穏やかな生活は僕の荒れた心すら少しずつ解してくれているようだった。
だからきっと、僕はあのコに手を差し出さなきゃいけないのかもしれない。
人間とは思えない生活を送っていた僕が優しい仲間や時間や生活の中で生きられるのだから、あのコにだって穏やかな生活が送れるのかもしれない。
空腹によって張り詰めていたものが落ち着いたせいか、助けない、と言ったはずの僕はやはり朝日奈の言うように『手を貸さなきゃいけない』と思うようになっていた。
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