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2009/11/22

人は、なにゆえ旅に出るのか?  きみがいる時間

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「『ソングライン』は、大分読み進んだの?」 出来上がったパスタを皿に盛りつけながら、朋子が聞く --- 真昼に近い陽射しが南向きの窓から差し込むキッチンでのことだ。
「なかなか速読を許さない本で、まだ最初から五分の一位のところかな」と僕。

 さっき蜂が入ってきたと朋子が騒いでいたが、その蜂も今はどこかへ行ってしまったようだ。

「『人は、なにゆえ旅に出るのか?』という、大命題は解決されないままのような気がする。それが解った時、旅は終わる。そういうものなんだよ、旅は...。・・・そのスカート、可愛いね」 そう言ってパスタを口に運び、バレンシア・オレンジを絞り込んだ赤ワインのグラスに、僕は、ゆっくり手を伸ばした。
「あら、嬉しいわ、有難う」 自分の皿にパルメザン・チーズを下ろしながら、朋子が答える。「いつも昼時になると遊びに来るあなたのお友達は、今日は見えないのかしら...。その分、今日も、ちゃんと作ってあるのよ」と笑う。
「そうか、今日は木曜日か...」  僕は、椅子から腰を浮かせて窓の外を見下ろした。ロルフ・ニーハート --- 町で古書店を営む男だ --- の白い小型車が、崖下の道から上って来るのが見えてもいい時刻だった。

 一瞬、その白い車に見えたのは、崖下の岩場に砕けた波しぶきだったかも知れない。



"Rose Garden" Lynn Anderson


FINIS
 



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