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2009/6/22

春ひらく  貝殻これくしょん

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 小津安二郎のトーキーによる戦後の全作品のシナリオに関わった脚本家、野田高梧(のだ・こうご 1893 〜 1968)の『決定版 シナリオ構造論』を読む。シナリオ・ライターを目指す人のバイブルと言われて60年が経とうとしている本だ。初版は昭和27年、神田・寶文館から定価250円で発行された。試しにインターネットで検索してみると『シナリオ構造論 改版』として、いまだに同じ出版社から出ていた。版元の現『宝文館出版』は、昔から映画や演劇のシナリオ中心の出版社だったから、時勢柄、今はもう廃業したかと思っていた。
 ネット上で見た改版の帯には『シナリオ制作の代表的入門書』とある。引用された映画の多くは、今では京橋の国立近代美術館フィルムセンターに行かない限り、おいそれと簡単に観ることの出来ないものがほとんどで、その点を除けば、帯のキャッチに偽りはなく、内容もいまだ色褪せていない。ただ、多少残念なのは、シナリオ・ライター志望者が減ったのか、1987年以降増刷されておらず、古書で一万二千円もの値段が付けられている。元は二千円程度のはずだから、五、六倍のプレミアムが付けられたことになる。

 この本を紐解いて、まず意外なのは、同書が昨今常識のハウ・トゥ本のスタイルを取っておらず、技術書-----テクニカル・ハンドブックとして執筆されていることである。
 『1秒間3回転、即ち24コマ、1分間の速度にすれば89.9フィートの標準速度による.....』などの専門的記述もあるので、一般向け教養書というよりは、芸術系大学でシナリオを専攻する学生の副読本レベルである。

 昔の著述家の文らしく、無駄なく、美しいリズムの日本語で書かれていて、読んで内容はわからずとも、書き方の勉強にはなる。
 ストーリーの構成についての論述は、それがシナリオだろうが戯曲だろうが小説だろうが関係なく、純粋に自分の教養になっていくのがわかる。

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 好きな野田のシナリオを一本挙げろと言われれば、やはり小津との共作で、1974年の師走から翌年の春まで CX(フジテレビジョン)で放映された21回シリーズ『春ひらく』である-----実際は数人の作家に翻案、脚色されることとはなったが.....。
 主題歌には、Daniel Sentacruz Ensemble で世界的にヒットした “Soleado” が使われた。





FINIS
 



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