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2018/9/18

想い出を推敲すると  貝殻これくしょん

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 長いものを書くには時間と労力が必要。

 それなら短いものはどうかと言うと、それは結果的にそうなっただけで、構成に費やす時間は ----- まあ、ものにもよりますが ----- 長いものを考える時と大差はありません。作品の長短とそれに費やす『時間・労力』は比例しないのです。

 想い出を推敲すると短くなるのはよくある話で、結局、タイトルしか残らなかったりして...。




【Ai Ninomiya with Kitchen Orchestra / God Only Knows】


 

2018/9/16

二百十日の風  幕間の出来事

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 二百十日の風。

 突然、空が高い。




【Supertramp / It's Raining Again】


 

2018/9/15

まだ終わらない  幕間の出来事

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 まだ終わらない、もうひとつの夏の宿題。




【The Association / Cherish】


 

2018/9/12

壁を殴る人  車窓に開く頁

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 東京、午後七時。
 タワーが間近に見えるホテルの15階のバー "Kangaroo Hop" にぼくはいて、いつものペルノを注文していた。
 実は、このホテルのメイン・バーとダイニングは3階にあるのだが、夜景の美しさと肩の張らない雰囲気が気に入って、ぼくは、もっぱら、このセカンド・バーの方をよく利用していた。
 いつもバー・カウンターの定位置に立ち、国籍は不明だが、ここ数年、都内で十指に入ると噂されるようになったバーテンダーのテリー・Bに、未だたどたどしい日本語で「もしかしたらフランス人よりも、ペルノがお好きかもしれませんねェ」と感心され、「な〜に、ただの通風予防ですよ」などと、この夜も与太な返答をしている時のことだった。
 きわめて目もと涼しい大人の女性 ----- 仮に(十年後の)橋本愛とでも呼んでおこう ----- がひとり、カウンターのスツールに腰を掛けた。
 テリー・Bと彼女は、お互いすでに顔見知りのようであった。
「今夜は、何をお作りしましょう?」
「じゃあ、いつものバラライカを...」

 バーには、時折、多くを語らずともインテリであることを思わせる女性がやって来る。ブランディーをベースにした『サイドカー』などと言わないところが乙に澄ましていて気持ちが良いし、また、ジン・ベースの『ホワイト・レディ』などとカマトトぶらないところにも好感が持てる。
 いつだったか、別の、やはりひとりで椅子に座った大人の女性が「今夜は、もう飲んできたので、一杯だけプリマスをソーダで割って下さいナ」などと言っているのが聞こえてきて、《ああ、やるもんだなぁ》と感心させられたことがあった。
 《そんな飲み方をどこで覚えたのか》、あるいは《誰に教えられたのか》など、なかなか興味が尽きない。

 カウンター越しの大きな窓から望む東京タワーのオレンジ色の夜景をバックに、テリー・Bが十年後の橋本愛に尋ねた。
「お代わり、いかが致しましょう?」
「じゃあ、今度はハーヴェイ・ウォールバンガーを...」
「はい、かしこまりました」

                            

 "Harvey Wallbanger" は、キャリフォルニアのサーファーが愛飲するカクテル。

 ある日のサーフィン大会で断然優勝候補だったハーヴェイ君は、その日に限って何の手抜かりがあったのか不本意な負け方をした。そしてその夜、彼が訪れたいつものバーの馴染のバーテンダーがハーヴェイの敗戦を慰めがてら、コンペ用に考案中のカクテルを試飲させた。元来カクテル好きなハーヴェイは、案の定《やけ酒》となり、そのお代わりを続けた揚げ句、「気に入ったら、このカクテルに名前を付けてくれよ」というバーテンダーの頼みも聞けないほどまで泥酔した。

 その夜、ハーヴェイは、尚も納まらない惨敗の悔しさから「コンチクショー」と叫んでバーの壁を殴り、ふらつく足で帰って行ったという。それを見ていたバーテンダーが閃めいた。そのとき、世界に名立たるカクテル ----- 『ハーヴェイ・壁を殴る人』 ----- は命名されたとか...。

                            

 今夜は、十年後の橋本愛のその都会的で垢抜けたセンスについて、つまり《多くを語らずともインテリであることを思わせる》要素について、しばし考えてみようとぼくは思うのだった。

                            

【 Harvey Wallbanger recipe 】
Ingredients :
1 oz vodka
1/2 oz Galliano herbal liqueur
4 oz orange juice

Mixing instructions :  Pour vodka and orange juice into a collins glass over ice cubes and stir. Float galliano on top and serve.




【Alison Krauss & Shawn Colvin / The Boxer】


 

2018/9/11


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 海からの風に追われて

 釈迦堂の切り通しへ




【Hayley Westenra / The Water is Wide】


 

2018/9/9

東京ワンダーホテル  貝殻これくしょん

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 ここ十何年かで、懐具合に合わせてオフィスを何ヶ所か移動した。その度にメディアや本を整理して身軽になった。それでも手放さずに携えてきたものはあって、今日はそんな中から、2004年当時、深夜ドラマだったこともあり、視聴者はそれ程多くはなかったろうが、製作者・業界人の間で空前の話題になった『東京ワンダーホテル』のDVDを引っ張り出してきた。

 全四話。春夏秋冬、各季節ごとに一回の放映で、完結したのは4クール後。CMがドラマの筋立てに埋め込まれているため、著作権の関係から再放送はない。今、観られるのは、当時のVかDVDを持っている人だけ。




【佐藤竹善 / トーキョー・シティ・セレナーデ】


 

2018/9/6

そろそろどうにかしないと...  車窓に開く頁

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 5回裏を終わって3対0で負けていたときのことだ。

 今まで黙っていた顧問の先生が円陣を組むよう声をかけた。
「オイ、キミ達、そろそろどうにかしないと...」
「ハイッ!」というボク等の声にいくらか元気が欠けていたのは、相手の市立一中のピッチャーの出来が余りに良過ぎたからに他ならなかった。
「キミ達がさっきから追い込まれてから空振りしているインコースの球は、あれは手元で沈むのか?」と先生は答えを求めるようにキャプテンに視線を向けた。
「ハイッ! シュートが沈みます。それと、ストレートもナチュラル・シュートします」
「・・・・・・・・」
 円陣は沈黙した。

「インコースは全部捨てて、追い込まれる前に当てていこう」と先生は心配気に言うのだった。




【Del Shannon / Out of Time】


 

2018/9/5

いつか過ぎたある日  幕間の出来事

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 多湿だった気候も暦を改める頃になると、残暑ながら、日没後の涼風にハッとさせられる夜もある ----- それは、ウエイティング・サークルにとどまっていた季節とすれ違う瞬間。

 その時分ともなると夏の思い出は、静かに乾いて、雑多なドライフルーツのように記憶の器に蓄えられる。

 いつか過ぎたある日、わたし達は突然思い出したように、そのうちの一粒を摘まんで口に運び、じっくりと噛みしめたりするのだ。




【Paul Davis / Cool Night】


 

2018/9/4

絵の具と乾いた夏の匂い  きみがいる時間

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 夏の思い出を整理していたら、見つけたものがある ----- 描き終えたら送ってあげると約束した、きみの水彩画。

 画用紙に鼻を近付けると、絵の具と乾いた夏の匂い。




【The Happenings / See You In September】


 

2018/9/3

後片付けと直会(なおらい)  幕間の出来事

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 楽しかった氏神様のお祭りも終わり、今日、後片付けと直会(なおらい)を済ませてきた。

 お祭りの間だけは好きなものを好きなだけ食べて過ごした。




【Aretha Franklin / I Say A Little Prayer】


 

2018/8/31

虹と白砂に彩られた、どこか遠い国  きみがいる時間

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 風邪をひいた。夏休みの部活を休んだ。

 水泳部は ----- 熱さえなければ ----- 風邪など泳いで直してしまうのは常識。でも、今日のこの『微熱らしきもの』が、風邪なのかどうか、実はハッキリしない。

 昼下がり、庭に面して開け放った出窓越しに、階下から同級生で幼なじみの水口イチ子と母の会話が聞こえてきた。部活帰りに『不肖な息子』を見舞ってくれたことに母が礼を言っている。

「降りてきてー。イッちゃん来てるわよー」と母の声が何度か聞こえた。

 イチ子と母 ----- ふたりの話題は、高校最後の夏、そして進路。

 自分は、いつか『虹と白砂に彩られた、どこか遠い国』を旅するのだと、イチ子の溌剌とした声が熱く聞こえている。




【The Beach Boys / I Get Around】


 

2018/8/29

暑い日である  きみがいる時間

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 海が近い、ここ鎌倉の古い木造住宅のほとんどは、潮風やそれが運んでくる砂を避けるため、海岸通りから少し距離を置き、周りを松などの林で囲んで建てられているのが普通である。砂の飛散を避けるため、庭に芝を貼る家が多いのも特徴と言える。

 戦前にお金をかけてしっかり建てられた屋敷が多く、うちのように戦後間もなく建てた家など、どちらかと言えば新しい方であった。

 空調のない時代、夏の防暑と湿気対策のために家の周囲の窓や縁側を解放して風が通るように設計されているため、エアコンを設置しても、構造上、逆にその効果は薄いのが通り相場だった。
 つまり、夏は扇風機と蚊帳、冬は厚着と火鉢・炬燵という、いわゆる昔の習慣と生活様式に則って建てられた木造家屋なのである。

                             ***

 高校最後の夏休みのある日、母が用事で出かけている時のことだ。

 暑い日である。

 茶の間で留守番をしていると昼近くになって、幼稚園から一緒の水口イチ子が、グリーンの風船がデザインされた、いつものトートバッグを持ってやって来た。この時間のそれには、おおむね昼食の材料が入っている。
「さっき、駅前でオバサンに会ったよ。どっかへ出かけられたのね? いつものようにお台所お借りしていいですかってことわっておいたから、使うよ」と言いながら縁側から上がると、茶の間に寝転がって甲子園を観ているぼくの投げ出した足を跨いで炊事場へ行った。

「お昼、まだだよねぇ」イチ子の声が聞こえる。
「うん、でも朝が遅かったから、まだ、お腹空いてなぁい。ひとりで食べていいよ」

 しばらくして彼女は、縁側にちゃぶ台を出し、扇風機を自分の方に向けて座ると、
「暑い日のお昼は、お素麺に限りまぁーす」と叫んだ。
 それは、開け放たれた家から隣近所に充分届くほどの大きな声だった。




【Roman Andrén / Til Another Day】


 

2018/8/22

してやったりという顔  きみがいる時間

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 今日の水口イチ子との会話はエキサイティングだった。

 命題を切り出したのはイチ子。
「アリゾナのグランド・キャニオンは、果たして世界で何番目に大きな渓谷でしょうか」
 大学の山岳部で一緒にロック・クライミングをしていたとは言え、ぼくには、そんな知識は無かった。しかし、無回答というわけにはいくまい。取り敢えず答えなくては...。

「スケールの大きさで言うなら、やはりグランド・キャニオンが世界第一位でしょう」

 ブッブーと言いながら、イチ子のしてやったりという顔。

 グランド・キャニオンなど、世界のベストテンにも入らないそうだ。
 第一位はチベットのツアンポー峡谷。これは近年の探検隊の報告、ひいてはグーグル・アースの写真からも既に証明済みだとか。

 渓谷の一番深いところ、つまり最深部は、六千メートルに達しているという。




【Human Nature / Be My Baby】


 

2018/8/21

きみが旅する頃は  装う想い

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 いち日のうちに四季が巡るアメリカ西海岸。

 この夏、きみは海風(うみかぜ)に吹かれながら、サンディエゴからシアトルへ、スカイラインの彼方を目指して旅するのだという。

 春先に淡いピンクの花が満開だったアーモンドも、きみが旅する頃には、きっと沢山の実を実らせ、その重さで枝先を大きくしならせていることだろう。




【Jess Lewis / Room 335】


 

2018/8/19

西日の当たるプリズム  幕間の出来事

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 きみは、ぼくをプリズムみたいだと言う。
 (口論になると、ぼくの発言は屈折するらしい)。
 そんな時のきみは、容赦のない、まるで夏の西日のよう。




【The Walker Brothers / The Sun Ain't Gonna Shine Any More】


 



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