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2017/12/7

発信人は誰?  車窓に開く頁

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 時折、午前零時を過ぎて venezia-sanmarco というアドレス以外は一切不明の発信人からメールが届く。
 ぼくのアドレスなどSNSのプロファイルにすら書いてあるのだから、誰からメールをもらおうと別に不思議はないのだが...。

 さて、最近では四日前...。

「こんばんは☆ 今、どこですか? Iron Skillet(鉄のフライパン) ----- ぼくがよく行く、深夜営業のレストラン・バー ----- ですか!?」と謎の人。
「昨夜は行ってたけど、今夜は自室で短い日記 ----- のようなもの ----- を書いています」とぼく。

                             

「そうですか...。今夜は、神輿会の忘年会へは行かなかったのですか? わたしは、これから Iron Skillet へ行くつもりです」と彼女。
「神輿会の忘年会は、義理堅い人が行けばいいのです。ところでメルアド、変えました?」 発信者を特定するヒントでも返ってくるかと期待して聞いたのだったが...。
「いいえ、変えてません☆ ただ、スマホにしました」

 その夜は、それだけ。

 発信人が誰だか特定するために、その夜、着替えて Iron Skillet へ出かけてみてもよかったのだったが...。




Martha Reeves & The Vandellas / Heat Wave


 

2017/12/3

恋の防腐剤  きみがいる時間

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 朝が来る度に、キャスルトンやチャモンが薫る。

 サンルームのテーブルに、
 水口イチ子が忘れたシナモンスティックが一本。

 恋の防腐剤? サッポーが、どう書いたかは知らないが...。




Air Supply / Lost In Love


 

2017/11/26

顔を合わせる努力をしないといけない  きみがいる時間

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 最近、水口イチ子とオフの時間が合わない。一日に1度か2度、写メを送り合うのが精一杯。しかし、写メは便利なようで実は逢っているような錯覚をもたらすだけだから、やはりきちんと逢って顔を合わせる努力をしないといけない。

 ところで、昨日は夜半過ぎまで TV 局の会議室で放送台本に手を入れ、その後メール・チェックもせず、新宿二丁目の朝までやってるバー経由で帰宅。明け方、就寝前に着信履歴を見てイチ子からの写メに気付いた。

《これからシドニーまで乗務します。行ってきます。日曜の午後便で戻りますが、夜、逢えますか?》

 残念ながらもう離陸したあと、と言うかシドニー着陸目前の時間。返信メールは適わない。
 もう三週間も逢っていないから、どうにかして日曜の夜は仕事のアポを入れずにおきたい、というよりは仕事をさっさと済ませておこうと心に決める。

 さて、イチ子がメールに添付してきた出発時刻案内の電光板の写真だが、よく見ると彼女の乗務する便が表示されていない部分だ。ブリーフィングに遅れそうだったのか、成田の発着ロビーを急ぎながら、とりあえず慌てて一枚撮ったもののようだった。




Peter & Gordon / I Go to Pieces


 

2017/11/24

きみがホワイト・クリスマスを歌えないわけ  貝殻これくしょん

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 さて、国の歴史が長いと、国民の宗教観が多様化するのは何も我が国だけに限ったことではありません。しかし、日本人のように、その多くが仏教徒でありながら、クリスマスも祝えば神社も参拝するという例は世界で日本だけかもしれません。戦に敗れ、アメリカの文化が色濃く急速に流入してきた国としては、それもまた止むを得ないことでしょう。そもそも太平洋戦争がなかったら、ハンバーガー、フライドチキン、コーラもここまで日常生活に密着したかどうかは疑わしいところです。さらに、クリスマスもここまで賑やかな行事になっていたかどうか...。

 いずれにせよ、景気の善し悪しに関わらず、あとひと月もすれば、その降誕祭はやってきます。昨今は生憎不幸な経済状況ですが、やがて街中でクリスマス・ソングも聞こえはじめるでしょう。

 ところで、子供の頃から聞き慣れたいくつものクリスマス・ソングの中で、あの『ホワイト・クリスマス』が日本語で歌われたのを誰も聴いたことがないと思います。

 さて、そのわけは...。

 『ホワイト・クリスマス』を作詞作曲したのは、明治21年(1888)生まれの Irving Berlin (アービン・バーリン) というロシア系ユダヤ人。音楽好きだったらしく、独学で音楽家として身を立てた苦労人 ----- 今でいう、シンガー・ソングライター。
 このバーリンさんが『ホワイト・クリスマス』を作曲したのが1940年というから彼が52歳の時 ----- 日本海軍がハワイの真珠湾を攻撃する前年のこと ----- バーリンさんは1989年まで存命で享年101才。

 そのバーリン爺さん、自分の子供か親戚縁者を対日戦で亡くしたか、あるいは戦争を仕掛けた日本を嫌ったのか、とにかく生前から日本語で『ホワイト・クリスマス』を歌うことを著作権者として絶対に許可しませんでした。さらにご丁寧なことに、死ぬ間際、遺言にまでそれを明記しました。よっぽど日本を嫌いだったとみえます。だから『ホワイト・クリスマス』は、日本人に限らず誰も日本語では歌えないのです ----- 遺言にも著作権同様の有効年限ってあるのでしょうか? 是非、知りたいところです。
 しかしその反面、チープな訳詞を無理矢理歌わされる不幸から私達は救われました。あの美しいメロディーは原語のまま聴いていたいし、歌っていたい。




Connie Talbot / White Christmas


 

2017/11/18

だとすれば...  きみがいる時間

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 水口イチ子がシドニーへの乗務から戻って成田で解放されたのが午後2時過ぎ。それから自分の部屋に寄らずに、ぼくの芝公園のマンションに着いたのが4時少し前。イチ子の携帯メールボックスに今夜の計画案は送っておいたから、ここまでの時間に無駄はない。
 支度を済ませて食事に出かけるとして、イチ子の盛装は、ぼくの部屋にいつも一、二着は置いてあるから手抜かりはない。
 彼女がシャワーを浴びている間、お土産だから開けてみてと言われた箱を開けると、出てきたのは Penfolds St. Henri Shiraz 2001 という赤ワイン。ラベルにブドウの品種はシラーとあるから、もしかしたら以前飲んだことのあるシャトー・ラフィット・ロートシルトに似ているかも知れないと思った。

 だとすれば、当然、鴨だ。

 11月から解禁になっているから、鴨もまた食べ頃というわけだ。表参道の紀ノ国屋だったら鴨の調達に一時間あれば行ってこられるなと考えた。
 シャワーから出てきたイチ子に提案すると、それならふたりで表参道へ行って、戻ってきて、ここでディナーにしようということに即決した。

 地下鉄を日比谷で乗り換えて表参道まで。手をつないで歩き、会話して、買い物をして、それは、ぼく達をまったく新鮮な気持ちにさせた。

                             

 ぼくが得意とする『鴨のソテーのチョコレートソース』 ----- 作るのにそれほど時間は要らない。パンと少しのチーズと例のワインをテーブルにセットしていると、化粧して盛装した彼女がワイングラスを持って、ぼくの後ろに立った。
「あなたは着替えなくていいわよ。わたしは、あなたに見せたくて着替えただけだから...」
 イチ子からワイングラスを受け取ってそっとテーブルに置くと、ぼくは、思わずイチ子の腰に手を回したのだった。




Angelina Jordan / Fly Me To The Moon


 

2017/11/12

人は、なにゆえ旅に出るのか?  きみがいる時間

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「『ソングライン』は、大分読み進んだの?」
 出来上がったパスタを皿に盛りつけながら、水口イチ子が聞く ----- 昼の陽射しが南向きの窓から差し込むキッチンでのことだ。
「なかなか速読を許さない本で、まだ最初から五分の一位のところかな」とぼく。

 さっき、キッチンに蜂が入ってきたとイチ子が騒いでいたが、その蜂も今はどこかへ行ってしまったようだ。

「『ソングライン』の大命題『人は、なにゆえ旅に出るのか?』は、今のところ、まだ解明されていない。それが解ると旅は終わるのかもしれない。ところで、そのスカート、似合うよ」
 そう言ってぼくは、パスタを口に運び、バレンシア・オレンジを絞り込んだ赤ワインのグラスにゆっくり手を伸ばす。
「あら、嬉しいわ、有難う」自分の皿にパルメザン・チーズを下ろしながらイチ子が答える。

「いつもお昼時になると遊びに来るあなたのお友達は、今日は見えないのかしら...。あの人の分のお昼もちゃんと用意してあるのよ」と笑う。
「そうか、今日は木曜日か...」ぼくは、椅子から腰を浮かせて窓の外を見下ろした。
 ロルフ・ニーハート ----- 町で洋書の古書店を営む男 ----- の白い小型車が、崖下の道から上って来るのが見えてもいい時刻だった。

 一瞬、その白いクーペに見えたのは、崖下の岩場に砕けた波しぶきだったかも知れない。




Guylaine Tanguay / Sloop John B


 

2017/11/11


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 1974年7月26日の日付のあるきみからの手紙は、ホテルの紙ナプキンにブルーの色鉛筆で書かれている。

 あの頃のインドネシアのリゾートでは、航空郵便用のレターペーパーは手に入らなかったのだろうか。しかも封筒すらタイプ用紙を貼り合わせた手作りで、縁を写生用のチョークで着色してある。

 その頃、きみの髪は、もうすっかり細く、しかも赤みがかって、何年か後に流行るソバージュヘアみたいだったよね。
 病が、きみを少しずつ老けさせていたんだ。

 その手紙できみは、ガドガドという食べ物を気に入っていると知らせている。暑いところだから、火照った身体を冷ます、一種の野菜サラダ ----- どんな香辛料が入っているか分析不能なピーナッツソースで和えてあるという。それをおかずにご飯と交互に食べるのだとか。

 きみが気に入った、そのガドガドは、いつかぼくも食べに行きたいと思っているよ。

                             

 写真が一枚同封されていた ----- 泊まったホテルのプールだとか。
 インスタマチックカメラのレンズの中心を残して、回りにマンゴージャムのゼラチン質をいたずらに塗って写したのだと説明がある。
 不思議な写真 ----- 夢の中の景色のよう。

 その頃、きみのお父さんが娘の旅のスポンサーであり続けた気持ちを、その時のぼくは、まだよく理解していなかったように思う。




Kenny G / The Shadow Of Your Smile


 

2017/10/30

いちばん暑かった夏  幕間の出来事

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 誰にだって『いちばん暑かった夏』がある。




CoCoNut Boys / サマー・ガール


 

2017/10/29

どんな時に?  きみがいる時間

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「今までで、どんな時に自分が大人になったなぁと思ったことがある?」と水口イチ子に唐突に聞かれて面食らった。
「なんか急に聞いてみたくなったの」とも。

 ほとんど質問されたことのない問題で、ぼくにはしばらく考える時間が必要だった。

「疲れ易くなっただの、眠りが浅くなっただののようなマイナスの要因では、そんなことは思ったことないな。かと言って、お小遣いに不自由しなくなったなんていう物質的なことでもない」とぼく。
「う〜ん、今のところ、予想どおりの答えね」とイチ子。

「そうだなぁ、子供の頃嫌いだった食べ物、例えば春の蕗のとうやセリやタラの芽、夏が来て茗荷、秋にサンマのワタなんかを食べて『あ〜、美味しい』と思った瞬間に同じ質問をされたら、『今!』と答えると思う」とぼく。
「へ〜、そうなんだ」と妙に感心したような口調のイチ子。

「まぁ、ここだけの話だけど、夫婦もんがやってるような街の小さな居酒屋なんかで、百八十円のアジフライを頼んで、それにウスターソースをイッパイかけて、それをかじりながらハイボールなんか飲んだりしている時に同じことを聞かれても、『今!』って答えるかな」
「ハイボールって、ウイスキーを炭酸で割ったやつね?」
「そう、そう」
「アジフライが好きなのは、安いから?」
「違うね。好きだからだね。大人の味だしね。仮にそれが五百円だって食べるよ」
「なんだか、あたしも急にアジフライ食べたくなっちゃった。夕飯、アジフライでもいい? おいしいパン粉付けてうちで揚げるから...」と言うとイチ子は、早くも買い物に出かける支度を始める日曜の昼下がりであった。




The Astronauts / Hot Doggin'


 

2017/10/25

夏に降る雪  きみがいる時間

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 早朝の一番機を滑走路へと導く誘導路のランプが、朝靄に小さく乳白色のハレーションをつくる。

 果たして飛行可能か否か。

 いつもの事ながら、離陸時間までには晴れるはずとグランド・スタッフ。山と水辺が近い地形にある飛行場ではよくあることという。

                             

 昨日まで遊んでいたラグーンでは、今朝も変わらず、沖のリーフに小さく砕ける波の音が遠く近くに聞こえていることだろう。

                             

 十日ばかりの滞在で、すっかり日に焼け、一皮むけつつあるぼくの背中は、見ればどこか知らない世界地図のよう。

 ムズムズする肩先を軽く掻くと、薄皮が粉雪のように辺りに舞う。

 まるで夏に降る雪だと水口イチ子が笑う。




The Hollyridge Strings / Yesterday's Gone


 

2017/10/17

ぼくが父親ではないかと散々疑われたのも...  車窓に開く頁

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 夏も八月生まれなのに体質的に暑いのはさっぱりで、秋も深まり、フリースの上着が着られる頃になると俄に元気が出て来るのには我ながら苦笑します。

 ところで、旧友から聞いた話では、きみのあのひとり娘が今週末にお嫁に行くとか。

 よかったですね。

 女親ひとりで育てられるものかと、他人事ながら気を揉んだ昔がついこないだのようです。ぼくが父親ではないかと散々疑われたのも、今は思い出です。




The Cowsills / We can fly


 

2017/10/14

掌が包むその秋色  装う想い

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 ほんの数週間前、
 南の島で白砂をすくったきみの手は、
 今、公園の落ち葉を載せる。

 雛鳥を温めるように掌が包むその秋色は、
 きみの提案で持ち帰られることとなった。

 黒い漆塗りの丸盆に
 栗のイガと共にひとつに盛り、
 しばらくの間、眺めていたいというのだが...。




The Ventures / Over The Mountain and Across the Sea


 

2017/10/10

まだ終わらない夏  きみがいる時間

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 十月に入ると、めずらしくこんな暑い日でも、週日のビーチはさすがに顔見知りのロコばかりになった。

                               

 午前六時、葉山のファミレスのモータープール。

 判で押したように集まる波乗り仲間達は、それぞれに目で波の高さを測る。
 待ちきれず、何も飲まずにボードを乗せた中古軽トラックのエンジンをかける大学生もいれば、なぁに、時間はたっぷりあるんだとばかりに開店したての店に入っていくオフの社会人も...。

 ぼく達は、駐車場のフェンスに寄りかかっていた。
「今日は久し振りに暑くなりそうね」と水口イチ子。
「そのようだ」とぼく。
「こないだの朝礼で担任が、もう二学期なんだから授業中に居眠りをするようなら登校前の波乗りは止めとけって言ってたよね。受験勉強で寝不足なのと遊び疲れて眠そうなのとは成績でわかるって」
「で、俺達はどっちに分類されてるんだ?」
「う〜ん、アタシ達は居眠りはしないけど、成績は後者ね」

 ここでは、夏が終わるのは、まだまだ先のようだ。




Mai - K / Don't Worry Baby


 

2017/10/6

アディオス・ムチャーチョス!  車窓に開く頁

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 午前八時半。
 東京・羽田空港、第2旅客ターミナル。

「正直言って、独身とは言え、五十になって転勤はホント厳しいですよ」と彼。
 離陸も迫った時間だったので、セキュリティゲート前は混雑が始まっていた。

 家族がいて一緒の転勤なら、気分もまた違っただろう。

「福岡じゃ遠隔地のうちには入らないよ。普通に週末に帰って来られるじゃないか」と私。
「そうですね。でも寂しいですよ」と言って彼は小さく笑った。

                             

 ゲートの向こう ----- 人混みに紛れて見えなくなる寸前、彼は振り向くと右手を高く上げ、
「アディオス・ムチャーチョス!」と叫んだ。
 アディオスのアクセントが『オ』にある。そう言えば、彼は大学はスペイン語学科だったっけ...。
 日本語で言うのが照れ臭かったのだろう。

 アディオス・ムチャーチョス! ----- 友よ、さらばだ!




George Martin and His Orchestra / This Boy


 

2017/10/3

海を着ているみたい  きみがいる時間

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 ご無沙汰しています。
 去年の暮れ、ふたりで忘年会をしたとき、またすぐに新年会もしようと約束しましたよね。でも、あのあと急に忙しくなって ----- 働くとなると十八時からというのはご存知ですよね ----- 晩餐会をする状況ではなくなってしまいました。

 決して約束を忘れたわけじゃないんです。

 最近、やっと余裕ができて、週に一日、二日なら、夜の時間も戻ってきました。
 遅くなりましたが暑気払いでもしませんか ----- もうすっかり秋風の頃ですけれど...。
 信州蕎麦とともに燗酒一献差し上げましょう。

                             

 去年の夏、腰越の家で撮った写真を見つけました。
 そのうちの一枚 ----- 「潮風に干したTシャツは、海を着ているみたい」と言って、きみが庭先ではしゃいでいたのを思い出します。
 とっても逢いたいです。




The Chiffons / One Fine Day


 



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