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2017/10/17

ぼくが父親ではないかと散々疑われたのも...  車窓に開く頁

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 夏も八月生まれなのに体質的に暑いのはさっぱりで、秋も深まり、フリースの上着が着られる頃になると俄に元気が出て来るのには我ながら苦笑します。

 ところで、旧友から聞いた話では、きみのあのひとり娘が今週末にお嫁に行くとか。

 よかったですね。

 女親ひとりで育てられるものかと、他人事ながら気を揉んだ昔がついこないだのようです。ぼくが父親ではないかと散々疑われたのも、今では思い出です。




The Cowsills / We can fly


 

2017/10/14

掌が包むその秋色  装う想い

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 ほんの数週間前、
 南の島で白砂をすくったきみの手は、
 今、公園の落ち葉を載せる。

 雛鳥を温めるように掌が包むその秋色は、
 きみの提案で持ち帰られることとなった。

 黒い漆塗りの丸盆に
 栗のイガと共にひとつに盛り、
 しばらくの間、眺めていたいというのだが...。




The Ventures / Over The Mountain and Across the Sea


 

2017/10/10

まだ終わらない夏  きみがいる時間

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 十月に入ると、めずらしくこんな暑い日でも、週日のビーチはさすがに顔見知りのロコばかりになった。

                               

 午前六時、葉山のファミレスのモータープール。

 判で押したように集まる波乗り仲間達は、それぞれに目で波の高さを測る。
 待ちきれず、何も飲まずにボードを乗せた中古軽トラックのエンジンをかける大学生もいれば、なぁに、時間はたっぷりあるんだとばかりに開店したての店に入っていくオフの社会人も...。

 ぼく達は、駐車場のフェンスに寄りかかっていた。
「今日は久し振りに暑くなりそうね」と水口イチ子。
「そのようだ」とぼく。
「こないだの朝礼で担任が、もう二学期なんだから授業中に居眠りをするようなら登校前の波乗りは止めとけって言ってたよね。受験勉強で寝不足なのと遊び疲れて眠そうなのとは成績でわかるって」
「で、俺達はどっちに分類されてるんだ?」
「う〜ん、アタシ達は居眠りはしないけど、成績は後者ね」

 ここでは、夏が終わるのは、まだまだ先のようだ。




Mai - K / Don't Worry Baby


 

2017/10/6

アディオス・ムチャーチョス!  車窓に開く頁

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 午前八時半。
 東京・羽田空港、第2旅客ターミナル。

「正直言って、独身とは言え、五十になって転勤はホント厳しいですよ」と彼。
 離陸も迫った時間だったので、セキュリティゲート前は混雑が始まっていた。

 家族がいて一緒の転勤なら、気分もまた違っただろう。

「福岡じゃ遠隔地のうちには入らないよ。普通に週末に帰って来られるじゃないか」と私。
「そうですね。でも寂しいですよ」と言って彼は小さく笑った。

                             

 ゲートの向こう ----- 人混みに紛れて見えなくなる寸前、彼は振り向くと右手を高く上げ、
「アディオス・ムチャーチョス!」と叫んだ。
 アディオスのアクセントが『オ』にある。そう言えば、彼は大学はスペイン語学科だったっけ...。
 日本語で言うのが照れ臭かったのだろう。

 アディオス・ムチャーチョス! ----- 友よ、さらばだ!




George Martin and His Orchestra / This Boy


 

2017/10/3

海を着ているみたい  きみがいる時間

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 ご無沙汰しています。
 去年の暮れ、ふたりで忘年会をしたとき、またすぐに新年会もしようと約束しましたよね。でも、あのあと急に忙しくなって ----- 働くとなると十八時からというのはご存知ですよね ----- 晩餐会をする状況ではなくなってしまいました。

 決して約束を忘れたわけじゃないんです。

 最近、やっと余裕ができて、週に一日、二日なら、夜の時間も戻ってきました。
 遅くなりましたが暑気払いでもしませんか ----- もうすっかり秋風の頃ですけれど...。
 信州蕎麦とともに燗酒一献差し上げましょう。

                             

 去年の夏、腰越の家で撮った写真を見つけました。
 そのうちの一枚 ----- 「潮風に干したTシャツは、海を着ているみたい」と言って、きみが庭先ではしゃいでいたのを思い出します。
 とっても逢いたいです。




The Chiffons / One Fine Day


 

2017/10/1

『小説家を見つけたら』、あるいは『日々、書く』ということ  貝殻これくしょん

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 ニューヨークの低所得者層が多く住む街ブロンクスに、希有の文才を持つ十六才の黒人高校生ジャマールは暮らしていた。
 彼は、バスケット三昧の友人達から仲間はずれになりたくないために、ひたすら文学の才能を隠し、全米学力試験では優秀な結果を見せても、普段の学業では故意に目立つ良い成績を取ろうとはしなかった。

 ある日、仲間達に度胸試しに忍び込まされた、ある老人が隠れ住むアパートの部屋 ----- その老人とは、若い頃、処女作でピューリッツァー賞を受賞した後、突然世の中から姿を消した、二十世紀アメリカ文学史上最大の小説家ウィリアム・フォレスターであった。
 小説家はジャマールの文才に気付き、自分の存在を世間に明かさないことと、なぜ生涯一作の小説しか書かなかったのかを聞かないことを条件に、より高度な文章の書き方を教え始めるのだった。
 そうしたある日、ジャマールの通う高校の国語の授業中に事件が起きる...。

                             

  "FINDING FORRESTER" is a 2000 movie, written by Mike Rich and directed by Gus Van Sant, about a teenager, Jamal Wallace, played by Rob Brown, who is accepted into a prestigious private high school. He also befriends a reclusive writer, William Forrester, played by Sean Connery. 【From Wikipedia, the free encyclopedia】

 『小説家を見つけたら』は、マイク・リッチ脚本、ガス・ヴァン・サント演出による2000年公開の映画。
 不本意ながら私立の名門校に通うことになった高校生ジャマール・ウォレスをロブ・ブラウンが演じる。彼は、ショーン・コネリー演じる隠遁の小説家ウィリアム・フォレスターの友人になっていく。 【ウィキペディア英語版より(拙訳)】




Finding Forrester - Trailer


 ウィリアム・フォレスターのように隠遁の生活に身をゆだねても書く。しかも、ジャマール・ウォレスのように情熱をもって書く。そして、日々、書く。そうやって生きていこう。


 

2017/9/27

およそ20マイル  きみがいる時間

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 ぼくときみを隔てている距離はおよそ20マイル。
 それは、見上げる空ならば、もはや成層圏。

 それでもぼくは、今すぐきみに逢いたい。




Satin Doll & Mai - K / Please Let Me Wonder


 

2017/9/24

きみの時間  きみがいる時間

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 きみの時間は、ぼくの時間。

 『煙草路地』を三回聴いた。

 ぼくの時間は、きみの時間。




はちみつぱい / 煙草路地


 

2017/9/23

『あの島影行』から  貝殻これくしょん

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 月刊漫画『ガロ』通算第125号は、昭和四十九年(1973)一月、神田神保町の青林堂から発行された。その四十五頁にぼくがいまだにその印象を引きずる鈴木翁二の『あの島影行』が掲載されている。

               

 造船所構内の坂を、一気に登ってしまえば
 あとはらくだった
 防波堤がゆるいカーブでいつまでも続いている
 戻りの爽快さを思い出して
 頬はひとりでに笑ってしまう

 それでなくても、
 光は湾いっぱいにあふれていて、遠くのサンドポンプの
 音を「あれはガリバーの寐息」という事にしていた

 スタンドを掛けずに自転車を投げ出すと
 良孝は、そのまま海へ飛び込んだ

 猿棒の尖から汐見までを、一直線にクロールで泳ぎ、
 戻りは抜き手で軽く流すのが良孝のやり方だった。
 それはいつでも変わらない
 もう一度繰り返すかどうかは
 (この八月の)光が決定することだ

               

 彼等は町の東部にある
 同じ中学の生徒だった
 新学期が始まって間もなく、良孝が
 クラスへ模型工作の雑紙を持っていった
 ことから、はなすようになった
 良孝のフジ・099のエンジンを、彼は
 小さいといって笑った

 美、観念、虚無と実在、などといった
 魅力的な言葉にまぜて
 クロロホルムの小壜をいつもポケットに
 忍ばせている、赤い耳をした友だちは
 ・・・そんなことも良孝に教えた
 視野のすみで友だちの横顔を眺め
 ながら、良孝は、
 「ぼくは早熟じゃあないな」
 と恥ずかしかった

               

 良孝は
 湾のおだやかさが不満だった
 「あの島へ行けば太平洋が見えるぞ」
 そんな気がした

               


 ○島は、思ったよりも大きい感じだった
 発着所前からのバスをやり過ごして
 二人は歩いた。

               

 ---あんたら○中の人か
 ---・・・・・ふふ
 ---○中なら三の二の島崎って
 やつ知っとる
 ---・・・・・・・・・
 ---あんたら泳がんのか
 ---泳いだもん、ね!
 ---ね〜

               

 「年寄りみたいな声だ、年寄りみたいな声だ、年寄りみたいな声だ」そんなことを頭の中で
 繰り返しながら、良孝は、あの岩礁までは
 絶対に休まずにいくぞ、と思った

 良孝は、岩場に横になると目を閉じてみた
 世界が赤く遠くなり、それは、彼を危うくさせた

               

 甲板に立つと島影が見えた
 島の背後にだけは、まだ海の反映が残っていそうな
 気がした
 「さっきまであそこにいたんだな・・・」
 今も少女たちが笑っているような気がした

               

 卒業アルバムの少女たちを×印で○○して次の年の夏に
 良孝は高校生だった

               

 取り立てて筋があるわけではなく、こんな調子で中学生最後の夏休みの思い出が描かれる。

 人には、十五、六才の頃の思い出を語り、またそれを聞いて理解できる共通言語がある。だから、他人の青春であっても胸が疼く。




The Hollyridge Strings / No Reply


 

2017/9/22

巴里から東に150km  きみがいる時間

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「シャンパーニュ地方って美味しいシャンペンができるのに、どうして美味しい白ワインの話を聞かないのかしら」とイチ子。続けて、
「だってシャンペンが発泡する前って白ワインでしょ?」
「そりゃあ、その前の段階の白ワインが美味しければ、そのままマーケットに出すんだろうけど、シャンパーニュって実は美味しいワインができるような風土じゃないらしいよ。それで、手間をかけて発泡させてみたら、奇跡的に上手いこと化けたってのが事の真相のようだよ」とぼく。
「へー、そうなんだ。それって神様のおかげ? それとも偶然?」
「人の努力かもしれないけれど、神様とか先祖のおかげとかにしておいた方が無難かもしれないね」




Marmalade / Reflections Of My Life


 

2017/9/21

トーストしてカリカリのパンの耳  貝殻これくしょん

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 BLT(いかにもアメリカ人らしいネーミング)もどきのサンドウィッチとチキンスープが今日のランチ ----- 作るに多少手を焼くメニューだ。かじると、トーストしたパンの耳のクズが、パラパラとテーブルに散らばる。

 さて、食べながら読んだ古雑誌の映画欄に、パトリス・ルコントの『暮れ逢い』が載っていた。原作は、シュテファン・ツヴァイクだという。

 ツヴァイクは、東京オリンピックの頃、みすず書房から全集も出ていたほどの作家だが、その後、なぜか読まれなくなる。辛うじて生前の児玉清さんが、彼の『チェスの話』は学生時代からの愛読書であると公言したため、ここ数年地味に読まれているようではあるが...。

 ツヴァイクというのは奇妙な人で、オーストリアのユダヤ人だった彼は、第二次欧州大戦を逃れ、英国、米国と逃避し、行き着いた先のブラジルで我が帝国陸軍のシンガポール占領のニュースにショックを受け、睡眠薬を飲んで(不眠症ではあったらしいが)自殺したという。浮気ネタの小説も平気で書くほどの作家なので、もう少ししたたかな人かと思っていたが...。
 同じ頃のベンヤミンの自殺の状況に比べても理由が薄弱である。まさか、トロツキーの暗殺のあとのことだったから、迫るナチスの暗殺者の妄想にでも駆られたか...。

 急に人気を失った作家というところで上司小剣を思い出し、作家の揺れ動く心境を察したところで尾崎喜八を思い浮かべた。そして、ここまで書いて一息ついたら、フォークナーやドス・パソスも記憶の端に見え隠れし始めた。

 昼食のトーストしてカリカリのパンの耳で、今日はめずらしく口の中に傷を作らずに済んだ。それで少し幸せな気持ちになっている。




The Cowsills / The Rain, The Park And Other Things


 

2017/9/18

足は細いがウエストは否(ノン)  車窓に開く頁

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 小学校の頃からソバカスの多い子だった。

 中学に上がる頃には、それは色白のせいだと信じていた。

 高校生になって、半袖の下に見える腕の産毛が夏の光線を金色に反射するのに気付いた。その頃、髪も脱色されて見えたのは、部活が水泳で、プールの塩素がそうさせているものと思い込んでいた。

 大学に入って、彼女から自分はロシア人の血が四分の一入っていると聞かされた。おじいさんが帝政崩壊時に日本に渡ってきたのだという。
 それを知ってからは、その容姿が秋田美人似であることと、そもそも体型にも違いがあることに気付いた。

 今ではうしろ姿は中年白人女性そのもので、足は細いがウエストは否(ノン)という、あのスタイル。
 思えば長くもあり短くもあった、あれらの日々からの半世紀。




The Hollyridge Strings / Sherry


 

2017/9/15

この夏  きみがいる時間

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 夏季増発ダイヤによるシーズン最後の貨客船が桟橋を離れると、港は晩夏の残光と潮騒にまみれた巨大な寂しさが腰を据えた。
 時折、岬の反対側、旧海軍航空隊飛行場の辺りから、白い大きなヘリコプターが離発着するのが見える。

 学校は来週の月曜から...。

 この夏、水口イチ子とは頻繁に逢った。
 いつまでも、ずっと一緒にいたいと思いはじめていた。




Human Nature / Baby, I Need Your Loving


 

2017/9/14


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 夏の湖畔の賑わいは遙かに遠ざかり、まるで別世界のよう。
 湖水はすでに、秋の終わりを思わせるほど冷たい。

 向こう岸、伊太利亜大使館の夏別荘あたりは、きょうは霞んではっきり見えない。




The Tetrads / Tell Me Why


 

2017/9/13

ひもすがら北東の風のいち日  装う想い

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 ひもすがら北東の風のいち日。
 ついに夏の終わりか...。

 季節中怯むことなく吹いた砂漠からの風がようやく凪いで、
 オレンジ色の陽が西の海に傾く頃の
 あのオランの暮れどきの季候に似ているようにも思えたのだったが...。




Cat Stevens / Morning Has Broken


 



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