四月馬鹿なので掌編書いてみました。ヤマなしオチなし意味なし。
このお話を読む前に『とみんち』のDivaを読んだ方がわかりやすいと思います。
というかDivaを呼んだことがある人にしか通じない内輪短編です。
それでもよろしければ続きを読むをくりっくしてごらんくださいまし。
ちなみに、エイプリルフールって、午前中までしか嘘は許されていないらしいですね。知らなかった。制限時間あんのかよ、って感じですよね。
「嘘をついてもいい日?」
きょとんと首を捻る少女。その日の事を彼女は知らない。聞いた事も無い。彼女が知らないからこそ、興味しんしんでそれを伝える双子。だって彼女がどんな嘘をついてくれるのか、考えるだけでわくわくするじゃん。との事。相変わらずくだらないことをやっている、と聞き耳立てつつ我関せずのラフェは、黙々と愛楽器を丁寧に磨く。
「そうそう。どっかの国のでっちあげの話だけどね」
「ていうか良いも悪いもないよね。僕なんて嘘吐きっぱなしで数え切れないよ」
「そうなの……」
やや上の空で返事を返すピアノを見つめて、双子はにこにこと続きを期待する。
さて、純真な彼女の唇からどんな嘘が出てくるのやら。その嘘にはどんな風に返してあげよう。
「ええとねえ……」
なんだなんだ。嘘の欠片も見出せない彼女から嘘が聞けるとあらば、興味の無かったものまで耳を澄ます始末。注目の少女は口元に人差し指を当てながら空を仰いで、やや経ってから閃いたように輝く笑顔で両手を合わせた。
「わかったわ!」
なになに。全員の耳が扇のように大きくなった、ように耳を済ませてその答えを待った。
次の瞬間、ピアノは嬉しそうに嘘を口にした。
「わたし、本当は男の子なの!」
一同、目が点になる。
時空に歪みが垣間見えたような錯覚の後、またも一同そろえたように、レアを見つめた。
「いや! いやいやいや、なんで私をっ、僕を見るんだよ! やめてよっ、なにその目!」
ピアノに代わって注目を集めたレアが大慌てで何かを弁解するように首を振るも、全員半信半疑の眼差しを崩さない。唯一爆弾を投下したピアノと、真実を知っているエアだけはニコニコ微笑んでいる。笑顔の質は、双方違いはあるけれど。
「いや……だって、なあ?」
「ああ……実際……どうなんだ?」
「俺はしらない」
「俺も」
ごくり。奇妙な間が伝染するかのように瞬く間に広がった。
ラフェが我関せずなのは勿論の事、エアはさも可笑しいかのように静かに極上の笑顔を浮かべている。きっと心の中では大爆笑だろう。
「やっ、やめてよ変な勘繰りは! じろじろ見るな気色悪いっ。目ン玉抉られたいのかよっ」
大慌てで啖呵を切ったところで効き目は薄い。皆がレアに興味津々の眼差しを向け始める。心なしかにじり寄ってさえ要る。
レアもさすがに、首筋に嫌な汗を感じた。さしずめハイエナに囲まれた怯える牡鹿だ。まさかのレアもこんな展開は予想していなかった。
「なあ、レア……このさいだから、いいか」
「ああ、確認の意味も含めて」
冗談じゃない。顔面蒼白、脂汗ビッシリでレアは後ずさった。
「ぼ、僕は……っ。も、もう知らない! 部屋に戻るよ!」
「あ、待ってよレアッ」
一目散に逃げ去る双子。ピアノを回収することも忘れて、文字通り風のようにそこから逃げてしまった。
置いていかれたピアノはきょとんとしつつ、そのくせ段々としょんぼりした表情になっていった。それを我関せずだったラフェだけが気付いて、怪訝そうな顔を浮べた。
「なんだ」
「……わたし」
なにがいけなかったんだろう。物足りなさそうに、ピアノは口を尖らせた。
「嘘、ついたのにな」
しょんぼり。
ついたはずなのに、誰も食いついてこなかった。人生初めての嘘。初舞台は、何故だかレアに鞍替えになり、一瞬できっちり忘れ去られていた。
そんなピアノの虚しい一言を聞いて心中を察したラフェだけが、一瞬だけなんとも言えない表情を浮べたのだった。
***
後日、レアはピアノをじっと見つめて微笑んだ。
眼差しだけが異様に真剣な光を放っている。
「正直な君が一番好きだよ。だからもう嘘は吐かないで」
「わかったわ」
うんうん。エアも納得したように感慨深げに隣で頷く。
「一見良い台詞なところがまたぐっと哀愁を誘うね」
「煩いっ。切実なんだよっ」
その数日、いやに生々しい男の視線に追いかけられ、少しだけ嘘に懲りたレアだった。

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