新人ちゃんが「工事、終わりましたかぁ〜?」と聞いて来る。わたしは ううん、まだ。 という顔で返事する。
3月になると、まるで宿題を忘れてた子供のように、あわてて道を掘り返す。街のあちこちで見かける光景だ。
新人ちゃんが心配しているのは、
街の予算の行方でも、わたしの
通勤の悪路でもない。その公園の工事が終わったら、保護猫のくりちゃんを「そこへはなって来ようか」と言った、
院長の提案を真に受けているからだ。
わたしはそんな話、鼻から信用しちゃいない
もう少し元気になったら。
もうちょっと体重が増えたら。
まだ外は寒いから。
明日も雨の予報だから。
延々と言い訳が続いている。




くりちゃんが来たのは1月の末。市役所に“なんでもやる課”みたいな部署があるそうで、道で行き倒れた野良猫の通報があったらしい。
普段、この手の処理は
保健所から連絡が入る事になっているのだけれど。役所って、横のつながりがないのよね・・・
今回は、そういう手順をご存じなかったなんでもやる課の若手さんが、段ボールに入った猫を、
連れて来ちゃった。まぁ、早い話、結果は同じ事なんですが。
「取り敢えず、治せるものなら治しますけどねぇ・・・」と院長。
見れば猫は心細い声で鳴いている。泥まみれの大人猫。
相手がお役所じゃ、連れては来ても引き取ってはくれない。たとえ治っても、里親探しは望み薄だ。
ノラさんを連れてくる人の多くは、なかなかその後の事まで考えが及ばない。そりゃあそうだ、とわたしも思う。
拾う = 救う
だと思うよね、ふつう。
でも救った後のその子は、いったい誰が面倒を見るんだろう? じゃあ 拾うな なのかと言われれば、決してYESとは思えない・・・ これは、奥の深いモンダイなのだ。
くりちゃんは少しずつ元気を取り戻し、ウイルス検査もクリアした。
体力が戻るにつれて、目が見えない事も判明し、歩いてみればみょうちきりんな腰砕け
とても外で暮らしてはいけそうにない。
とうとう入院用のケージからお引越、奥の間をあてがわれた。
きっとくりちゃんは、生涯をココで過ごす事になる。よろしくね、くりちゃん。

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