先日,某氏より「黒ぢょか」が正しいのか,「黒じょか」が正しいのかというお問い合わせがあった。じつは似たような質問を別の方からもいただいたことがある。
後述するように,私は「黒ぢょか」と思っていたので,試みにGoogleで検索してみて,
黒ぢょか:約360,000件
黒じょか:約694,000件
と,「黒じょか」の方が2倍近く多いのに驚く。
「黒」を付けないで呼ぶ場合は,通常「ちょか」である。これは江戸時代からそうで,私が今のところ確認している一番古い例として,越谷吾山『物類称呼』(1775)の,
「土瓶○薩摩にて ちよかと云 同国ちよか村にてこれをやく ちよかはもと琉球国の地名なり 其所の人薩州に来りてはしめて制るゆへにちよかと名づく(下略)」という記述がある。「ちよか」の由来については仔細不明であるが,「ちよか村」とは,おそらく苗代川を指していると思われる。
また橘南谿『西遊記』(1795)に
「薩摩にてノシロコ(苗代川−引用者注)焼のチヨカという。チヨカとは茶家の心にて土瓶の事なり。薩摩の方言なり。」と出てくる。つまり薩摩における土瓶の方言として「ちょか」があり,漢字をあてると「茶家」というわけだ。
薩摩藩側の記録としては,『薩藩政要録』(1828)中の「他国出御利潤有之品々之事」,つまり他藩に出荷して利益が上がる物品のリストのひとつに「茶家」とある。これもおそらくは「ちょか」と読んでいたのであろう。
このほか「黒猪牙」「黒千代香」などと書く例もあるようだが,これらもルビを振れば「ちょか」であろう。「黒猪牙」の初出は未調査だが,「黒千代香」は,昭和10年代頃から使われはじめられたという(木原三郎1979『陶工有山長太郎』有山長太郎四十年祭協賛会 pp.132-3)。
「ぢ」と「じ」の使い分けは,「現代仮名遣い」として一定の規則があるようだが,歴史的には「ちょか」「黒ぢょか」の方が適切だと考えている。
下の写真は苗代川窯跡群A08地点採集の「ちょか」。丸型と算盤玉形。
