桑畑正樹2008『彦次郎少年の密航奇譚 英船ドラメルタン号と種子島の人々−インギー夢と絆−』K&Kプレス
明治27年(1894)4月25日,種子島沖で座礁したイギリス船ドラメルタン号について書かれたルポルタージュである。
本書のきっかけになったのは,タイトルにある「彦次郎少年」こと島崎彦次郎のお孫さんである島崎保彦氏(本書「まえがき」執筆)が,ドラメルタン号で密航した祖父の足跡を追うことから始まっている。
そして島崎氏が調べたドラメルタン号遭難の顛末を南日本新聞社に連絡したところ,同社記者による特集記事が,1998年,50回に渡って同紙に掲載された。本書はそれをまとめたもの。
先日の水中文化遺産研究会(2010/01/11の記事)でご報告いただいたT口先生ご紹介の書籍。種子島には,この事故を記念した石碑も建っているとのことであるが,お恥ずかしながら,この事故についてはまったく知らなかった。本書によれば,(死者がひとりもいなかったせいか)事故に関する文書類も乏しいという。
著者は,わずかな手がかりから,イギリスやアメリカを飛び回るのだが,同地の海事博物館や公文書館は充実していると感じる。彼我における「海の歴史」に対する関心の度合いの違いだろうか。
なおサブタイトルにある「インギー」とは,種子島の方言で「イギリス」のこと。ドラメルタン号が島に残していった鶏の子孫「インギー鶏」が,現在も飼われているという。