車内はいつの間にか減光されていた。
枕灯を消したら寝台内は真っ暗。
柏崎を過ぎ、柿崎の手前0:40。
横に延々と続く砂浜。
高さ2mほどの白波が横一列になって、あわ立ちながらじわーと打ち寄せてくる。
その波頭を右から左へ指先でなぞるように列車は進んでいく。
やがて列車は松林の中に入り柿崎に停車。
松の枝の隙間に星が一つ。
駅を出ると急行なのに意外と速いスピード。
しかも一生懸命走っているわけではなく、かなり余裕のある走り。
直江津から北陸本線に入るとさらに飛ばす。時速100km以上か?
しきりに複線用の大きなトンネルに出入りする。
1:10トンネルの中の駅、筒石通過。
ほんの一瞬のこと。ホームの灯りは3秒ほどしか見えなかった。
速度が速くなったせいか寝台に横になると左右の揺れを感じる。
線路と平行に寝ているのでとくにそのような印象を受けるのかもしれないが。
揺れといえば、この電車寝台は駅発着時に客車寝台のようなガックンという衝撃がない。
しかし、走行中カーブの手前などでブレーキをかけるときは、さすがに少しカクンとくる。
客車寝台との違いといえば、窓辺に寄ってもススの香りがしないことも。
客車寝台は電源車あるいは車端部から煤煙が上がったりするのだが、電車寝台はそんなことがないからなのだろう。
糸魚川(1:23着)の手前。灯していた枕灯がいきなりすーっと消える。
幽霊が吹き消したように。
どうやら直流から交流への変わり目らしい。
全く意識していなかったので、ドキッとする。
1分もしないうちにまた点いたが。
道路高架橋が目の前に立ちはだかる親不知を過ぎるとようやく新潟県から富山県へ。
すると窓の外側に氷の粒がつき始めた。
峻嶮な北アルプスの末端部にさしかかって気温が下がったからか?
雪煙が車体を包みながら窓外を舞っている。雪の量も今までより多い。
進むにつれ窓についた氷がどんどん増え、集まって塊になった。
1:59魚津発
家々の屋根に積もっている雪は20cmほど。
県境を離れるにつれ、窓の氷が少しずつ下に降りてきた。
時おり、その氷に街灯や踏切の灯りが反射してステンドグラスのように淡く輝く。闇一色の窓外に瞬間的に。
2:16あともう少しで富山駅構内というところでいきなり急ブレーキ。体が前につんのめる。
しかし、運転士が停車寸前にブレーキを緩めたのか、停まる際の衝撃はなかった。どうやら事故ではないらしい。
何も動かず誰も騒がず。聞こえるのは、通路の上に据え付けられた空調のサーという音とかすかな寝息。
窓外には線路際に2階建ての民家。部屋の天井に黄色い電球が灯っているのがレースのカーテン越しに見える。
受験勉強でもやっているのか?
あまりにも居心地がよいので、このまま1時間でも2時間でも停まっていて欲しい、などとひとりけしからんことを考える。
が、4分後やおら出発して富山駅の中へ。付近の寝台から安堵の吐息が漏れる。
富山を出て2:37高岡着2分遅れ。30秒停車。
高岡駅はこの夏の終わりに、駅舎が階上駅に改装されたが、ホームの雰囲気は以前とさほど変わりがないような気がする。
ホーム下には線路と同じ高さの雪。湿り気のある雪。
駅を出ると途端に灯りが乏しくなる。
広い雪原と化した農地。
寝台に横になったら、ト・ト・ト・ト・と0.2秒おきにかすかに響く下からの音が耳につく。
悪い音ではないが何の音なんだろう。
この車両にはモーターはついていないのだが。
たまに空調が切れるとその音だけになる。多分車輪と関係しているのだろう。
まるで列車の脈拍のよう。
しだいに関ヶ原のように平地が狭まり、もっさりとした雪を抱えた木立が増えて列車は石川県との県境、倶利伽羅峠へ。
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