赤平駅(根室本線・北海道)
根室本線の起点、滝川駅から2駅目。
レンガ風のタイルが貼られた5階建ての鉄筋コンクリートの建物、「交流センターみらい」という名の公共施設の中に赤平駅はあった。
ホームからみどりの窓口の前を通り、施設1階の中へ。
椅子が十数脚。その前にはテレビが据え置かれ、大リーグの野球中継が映し出されている。建物はエントランス部分が吹き抜けになっており、その中をフルートの音色がひっきなしに流れていた。
駅の中というよりは、むしろガラガラに空いているお役所の中に紛れ込んでしまったような感じがしないでもない。
その一区画を割いて、飴や酒など地場産業の紹介。それとは別に、隅の方のガラスパネルの内側に石炭の巨大な塊が展示されていた。添えられている説明文によると、住友赤平炭鉱の地下770mから掘り出されたという。
黒光りとは、まさにこういうのを指すのだろう。波間の黒石のように、つやつや濡れているかの如くしっとりとした淡い光をその内に秘めている。ギラギラしているだけの品のない下手な宝石よりよほど美しい。
しかし、このような石炭を掘り上げるにあたっては、よく知られているように厳しい労働環境や死を伴う事故といった暗く過酷な事実があったわけで、それがためか、赤平ほどの大炭鉱地ならば、この建物の中でワンフロアーくらいとって炭鉱関連の展示がなされてしかるべきとも思われるのだが、そういったことが行われていないのは、石炭産業の歴史イコール誇りある地域のアイデンティティなどといった安易な構図では説明尽くせないものが地域の中にあるからなのかもしれない。
そんなとりとめのないことを考えながらエレベーターに乗り、6階の屋上広場に上がってみた。
7月の陽光が真下の跨線橋とそれに続くホーム上屋を照らしている。その向こうの駅裏には標高200mのズリ山。掘り出した石炭に付着した砂利などをこそぎ落とし、積み上げてできたものらしい。今は樹木が鬱蒼と生い茂っているので、それとわかり難いが。
その麓には選炭場の遺構。昔はその上に建物が建っていたのだろうが、今はコンクリの土台が土に埋もれ、朽ちかかっている様子が目に入るだけである。
なるほど・・・と思いながら何気なく視点を左に移して、ぎょっとした。
ここから直線距離にして1kmくらいであろうか。森の中に、高さ40mほどの馬鹿でかいロボットの兵士のようなものが直立不動で立っており、4つの大きな目で真っ直ぐにこちらを凝視している。なんとなく今にもこちらに向かって、ガー、ピーいいながらガチャン、ガシャン歩いて来そうな雰囲気がある。
これは、住友赤平炭鉱の立坑やぐらで、平成6年に炭鉱が閉山した後も住友系列の会社が所有・管理し続けているのだそうだ。やぐらについている4つの車輪を用いて地中深くから坑夫や炭車を積んだエレベーターを巻き上げていたらしい。
このような石炭に関する産業遺産の保存というと、その暗い歴史から、住民のコンセンサスをバックグラウンドとする草の根レベルでの保存はなかなか難しく、かといって、炭鉱地の自治体のほとんどが財政的に苦しく、文化財として国から幾ばくかの補助が出るとしても自治体レベルでの永続的な管理・保存は困難であろうから、企業主体での管理がなされているこの赤平の立坑やぐらは幸せ者だな、とつくづく思った。

(赤平駅舎)

(赤平駅ホーム)
(2010年7月17日)
旭川900-(特急スーパーカムイ14号)-929滝川937-948@東滝川1050・・(徒歩)・・1054東滝川バス停1059=(北海道中央バス)=1145@芦別1207-(快速狩勝)-1221@赤平1259=(北海道中央バス)=1328@滝川1353-1448岩見沢1505-(快速いしかりライナー)-1544札幌