小島駅(徳島線)
小島駅の駅舎は、車寄せのある古いものであった。
暫し時間があるので、その駅舎を出て、あてもなく道なりに歩いて行くと、国道を越えたところで吉野川が眼下に広がった。河口でもないのに随分と幅の広い川である。
河川敷の上には、黄色い三角の花をつけたセイタカアワダチソウが所々生えており、その間から大きなバッタが何匹も飛び出してきて、足元で弧を描いた。
ブロックが敷き詰められた水際に下りてみると、岸近くの流れの緩やかな所で、メダカが群れて遊んでいた。その様子を長細い貝殻を巻いたカワニナが、水中のブロックにへばりついたまま下から見上げている。
清い流れのほとりに腰を降ろして、絶えることのない瀬の音を聴きながら、川面を眺めていると、心安らぐような気持ちになる。日常の瑣末な出来事を、知らず知らずのうちに川の流れに託して、一緒に心の中から流し去ってくれ、無心になれるからなのかもしれない。
同じ水辺でも、浜辺で海を眺めているときには、そのような気持ちになることは、まずない。海の場合は、波が引いてはまた寄せ返すので、心の中のことを水の動きに委ねても、浮き世の厭わしいことを忘れきることができないからなのだろう。
そんなとりとめのないことを考えながら、ふと時計を見て、ぎょっとした。
乗る列車が出るまで、あとわずかしか時間がない。
駅までの道のりを駆けながら、川の流れというものは、厭なことを忘れさせてくれるばかりでなく、肝心なことも失念させるものなのだな、と身をもって感じた。

(小島駅ホーム)

(小島駅舎)

(付近の吉野川)
(2006年10月16日)
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