五能線全駅特集第38回
鶴泊駅(五能線)
弘前行きの列車の先頭車から、鶴泊駅のホームに降りた。
ホームの向こうには、大規模な青果貯蔵庫が聳えている。この青果とは、具体的には、リンゴのことを指すらしい。周辺のあちらこちらの木々から集められ、貯蔵庫のそばの選果場で選り分けられたリンゴの実を、出荷時までここで大切に保管しておくのだろう。
その貯蔵庫を眺めながら、ホームの上をゆっくりゆっくり歩いて駅舎の前に行くと、委託駅員のおばさんが改札口に立っており、私の切符をあらためた。
まさか、このような小駅で駅員が集札業務をしているとは思わなかったので、気付かなかったこととはいえ、待たせてしまって悪いことをしたな、と思う。
おばさんが、駅事務室に入っていったので、何気なくそちらの方を見ると、なんと、切符を切る改札用の鋏(はさみ)が窓口の中に置かれていた。なんとも懐かしい光景であり、つやつやと銀色の光沢を放つ鋏に目がくぎ付けになる。
私は、切符の収集家ではないが、切符に鋏を入れてもらうという趣を味わいたくて、おばさんに、隣の駅までの子供の切符を頼んだ。
すると、おばさんは、「小」という文字が中央に書かれたぺらぺらの軟券を鋏を入れずにそのまま差し出した。そこで鋏を入れてくれるよう頼むと、おばさんは、「入れていいの?」と、少し躊躇するようなそぶりを見せながらも、切符の右下に半円形の鋏の形を入れてくれた。
十数年ぶりの体験だな、と感慨に浸りながら、鋏の入った切符を受け取ると、鋏で切り取られた部分は、昔見た形よりも、やや小さいような気がする。
おかしいな、と思って窓口の鋏をよく見ると、それは、本物の鋏ではなく、飾り用に置かれたおもちゃの鋏なのであった。

(鶴泊駅ホーム)

(鶴泊駅舎)

(鶴泊駅舎内)

(件の切符)
(2006年9月18日)
-1223@越水1251-1322@鶴泊1335-1416@鰺ヶ沢1439(30分遅れ1509発)-