豊実駅(磐越西線)
豊実駅のホームに立つと、数百メートル離れた山中に大きな橋が架かっているのが見えた。
駅前に設置されている観光案内板によれば、その橋を渡って暫く行くと、即身仏が祀られているお堂があるらしい。行ってみようかと思ったが、かなり距離が離れているらしいし、私のような風来坊が突然訪れても、かような神聖なものを見せてもらえるかどうかわからぬので、行くのはやめて、ホーム上のコンクリ造りの待合室の中で昼寝をすることにした。
ホーム裏は鬱蒼と茂った杉林の斜面であり、そこから下って来る心地良い風が、筋になってホームを渡る。その風筋が待合室にも入るよう、ドアや窓を全開にしてベンチに横になった。窓には3匹ほどの小蜘蛛が巣を作っている。その巣が風で揺れるのを眺めているうちに、いつの間にか眠りに落ちた。
30分ほども眠った頃であろうか。いきなり、百雷が一時に落ちたような轟音とともに、物凄い煙が待合室にボワッと吹き込んできた。
爆弾でも落ちたのかと思って目覚め、灰色だか紫色だかのもやもやした中を飛び起きると、見慣れぬ客車がカタンカタンと硬い響きをあげて何台も窓外を駆け抜けるのが目に入った。
ホームに出て客車が進む方向を見すかすと、なにやら前の方でしきりに煙が上がっている。よく見ると、蒸気機関車が走っているのであった。
磐越西線の各駅にはこの蒸気機関車のことをアピールするチラシが壁に貼られていたので、走っていることは知っていたのだが、今日は運転予定日ではないので、その存在をすっかり忘れていた。何故今日走ったのかはわからぬが、試運転でもしたのであろうか。
とにかく、中途半端に叩き起こされたので、未だ夢うつつの境がはっきりしないような気がする。しかし、夢ではない証拠に、3分経っても5分経っても煙臭さは、待合室から抜けなかった。
その匂いを嗅ぎながら、私が昼日中から駅で昼寝をしていたので
「怠け者め!こいつはけしからん、叩き起こしてやれ!」と件の即身仏が天罰を下したのかもしれないな、と思った。

(豊実駅入口)

(豊実駅ホーム)

(豊実駅待合室)

(この日の夕方、喜多方駅で件の蒸気機関車に再び会った。隣の列車の中から撮影)
(2006年9月6日)
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