餘部駅(山陰本線)
潮風の漂う鎧駅から普通列車に乗り、山中のトンネルをいくつか抜けると、ぱっと宙に放り出された。
余部鉄橋である。
沖の水平線が車窓の下の方に伸びており、そこから日本海の荒波が、眼下の集落へとうち寄せている。
鉄橋の途中で列車はスピードを徐々に緩め、橋のたもとにひっそりと佇む無人の餘部駅に到着した。
列車から降り、駅のある高台から細い山道をうねうねと下って集落に向かって歩いていったら、集落間近の道端に実をたわわにつけた柿の木が立っていた。その柿の色合いに目を奪われ、しばし立ち止まる。
と、いきなり5時のサイレンが辺りに鳴り響いた。間近にスピーカーがあるらしく、とんでもない音量である。
余部の集落に轟くそのサイレンがようやく尾を引いて消えると、今度は山手の方の寺で、静かに鐘を撞き始めた。
鐘が1つ2つと谷間に響いていく。撞かれた鐘の音が細くなると、次の鐘を待ちわびるような気になる。
次は、5つ目の鐘だなと思っていると、カスッと乾いた音がした。鐘つき棒の当てどころが悪かったのであろうか。あわてたように、すぐに鐘を撞き直した。
6つ目の鐘の音を聴きながら、体に響く鐘の数がいつもと違ったので余部鉄橋がいぶかしげに思ったのではなかろうか、と案じた。

(餘部駅ホーム)

(餘部駅待合室)

(ホームから眺めた海 右手に余部鉄橋が山に向かって伸びる)

(余部鉄橋を下から見上げる)
(2005年10月10日)
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