市ヶ谷駅(中央本線)
中央線で通るたび、市ヶ谷駅の下に見える濠端の釣堀が気になっていたのだが、市ヶ谷に用事があった帰りに、そこで、釣りをしてみる気になった。
駅前から橋を渡り、釣堀に降りていくと、料金表が貼ってあった。貸し出し用のさお・仕掛け、練り餌などがついて、1000円もしないらしい。釣り上げた魚はどうするのかと訊いてみたら、魚は店に返して、その分、次回以降使える割引券を発行してくれるのだそうだ。
そこで、窓口のおばさんから道具一式を借りて、コンクリート製の武骨な釣堀の奥の方に陣取った。
椀の中の練り餌を丸めて針先につけ、糸を水中に垂らす。ぽつりぽつりと座っている釣り人たちは、おしなべて、じっと浮きを凝視していた。
辺りは酸素を送る装置が、水の中でブクブクと音を立てているだけで、都心にしては意外と静かである。が、目の前のホームに電車が出入りすると、さすがに大音量のメロディーが響いてきた。その音に池の中の鯉たちは、もう慣れたのであろうか。
始めてから30分ほど経った頃、私の浮きがふっと見えなくなったなと思ったら、ガクンガクンとものすごい勢いで糸が水中に引き込まれた。大鯉が水中で右に左に逃げ回っており、時おり背びれや尾びれが水面に現れる。
こんな大きな鯉がかかるなどと想定していなかった私は、タモ網を借りてくるのを忘れていた。困ったなあと思いながら1分間ほど鯉と挌闘していると、ふいにさおが軽くなったと思うや、鯉が針から外れて逃げてしまった。
がっかりした様な、それでいて、ほっとした様な気持ちになる。
それからは、釣りの方はいい加減にして、時間まで駅に電車が発着するのをぼんやり眺めて過ごした。

(市ヶ谷駅ホームと右下に広がる釣堀)

(市ヶ谷駅舎)

(釣堀から眺めた市ヶ谷駅ホーム)
(2006年8月21日)
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