氷帝夢の続きです。
今回から跡部寄りになってきた・・・かな?
ではでは、宜しければ続きからどうぞ☆
何で、がずっと頭から離れなかった。
shady,shady,sunshine.[3]
跡部は、病室ではなく治療室に座っていた。
幸い、脳震盪を起こしただけで脳にも異常は無いし、身体機能にもさほど影響は無いそうだ。
「跡部。大丈夫か。」
治療室に、監督を始めとして、次々とレギュラー陣が入っていく。
監督は、跡部の無事を確かめると、治療した医師の話を聞きに、そのまま別室に入っていった。
そんな中。
「・・・芦原先輩・・・?」
ちとせの足は、進む気配が無かった。
支えている日吉が問うが、ちとせはまるで金縛りにあったかのように治療室の前の廊下に突っ立っている事しか出来なかった。
進む事も出来ない。かといって、後ずさる事も出来ない。
・・・何で。
治療室の入り口から覗く頭と上半身に包帯を巻かれた跡部の姿は、痛々しかった。
ふと、目が合った。
「おい、お前等そんなとこで何してやがんだ?アーン?」
いつもの調子で、廊下に立っている日吉とちとせに声を掛ける。
そう言われて、日吉が、「行きましょう。」と、ちとせの体を少しだけ押して促すと、ようやくちとせの足は治療室に向かった。
「・・・・・・・・・・・・。」
無言で、跡部の前に立つ。
すると、跡部は、
「アーン?何だお前その頬・・・。」
ちとせの頬の絆創膏を見て言う。
と、
パンッ。
乾いた、音がした。
それは誰もが、予想だにしていなかった光景であった。
ちとせが、跡部の頬を叩いたのである。
その場に居た者達が、全く状況を掴めていないまま、ちとせは口を開いた。
「何で・・・何で!!そんなことどうでもいい!!何で自分の事考えないの!?部の事考えないの!?何で・・・・・何で・・・。」
何で、責めないの。
ちとせの瞳からまた涙が出てきた。
自分でもなんでこんなに涙が出るのかビックリだ。
「分か・・・ない・・・・何で・・・・悪いの、私、なのに、何で・・・・・。」
悪いのは、私だ。
なのに理不尽に怒っているのも、私だ。
それなのに、何で。
「・・・責めて、欲しいのかよ。どうしようもないなお前・・・。」
ふと、目を遣ると、跡部がこちらを見ていた。
ちとせの緑の瞳に映ったアイスブルーの瞳はそう言いつつも、少しも怒りの色など讃えてはいない・・・寧ろ呆れた様に笑みを浮かべている。
「俺がお前を庇ったのは俺の意思だ。お前、俺様の自由意思に意見するつもりか?アーン?お前は黙って俺様に素直に感謝しとけばいいんだよ。分かったか?」
そう言われたちとせはどうしたらいいのか、答える術も無く立ち尽くしていたが、
「分かったのかよ?アーン?」
アイスブルーの瞳に覗き込まれるように言われて、ちとせは思わず頷いた。
「分かればいいんだよ・・・大体俺様を誰だと思ってんだよ、アーン?・・・いやしっかし・・・。」
そう言って、自分の叩かれた頬を摩ると、
「・・・・殴るときたか。・・・面白い奴だな、お前。」
・・・・生まれてこの方言われたことの無いようなことを言われた。
というか、かなり失礼な事をしたというのに何故そんな事を言われるのだろう・・・。
「・・・ごめん・・・なさい・・・。」
「何で謝んだよ?アーン?お前は感謝だけしてろっつたろ、俺様に喧嘩売ってんのか?」
「・・・・・・・・・・ごめんなさい・・・・。」
どんなに考えても、そんな言葉しか出てこなかった。
跡部君はああ言ったけど、
きっと、本当は一番最初に言うべきだったのに。
「・・・どうやら本気で喧嘩売ってるらしいな・・・・・ちょっと歯ぁ食いしばれ。」
そう言って跡部は、ちとせの方に手を向ける。
「ちょお、跡部!?」
「おい!跡部!!」
「跡部先輩!?」
殴られるのだと、思った。
だが、意外にも痛みは無く、何かが優しく頬を撫ぜているのが分かった。
跡部の手が、ちとせの頬の傷に触れていた。
隣に居て、止めに入ろうとした日吉が思わずそのままの姿勢で固まる。
「・・・っち・・・庇いきれなかったか・・・俺様としたことが情けねぇ。」
驚いたちとせもまた固まってしまった。
瞳にたまっていた涙が、零れて跡部の手を伝う。
「・・・お前もあんな顔、出来んじゃねーか。」
「・・・・え・・・・。」
「あんな風に、顔上げて、怒ったり泣いたり出来んじゃねーか。」
「・・・・・・・・・。」
ちとせは、今更ながら、自分のやったことが恥ずかしくなってきた。
自分でも、酷く驚いているのだ。
あんな風に、取り乱して、泣いたり怒ったり・・・自分の感情の引き出しに、そんなものが、隠されていたなんて。
思わず、俯くが、それを跡部によって邪魔された。
頬に手を添え、自分の方にちとせの顔を向かせる。
・・・これも今更だが、恥ずかしい。
「・・・だが、まぁお前がどうしても、って言うんなら、償わせてやらないわけでもねーぜ?」
跡部は、にやりと何か思いついたように笑んだ。
「・・・・・・・・・・・?」
「俺様の体に傷を付けた落とし前、つけてもらおうか。」
「ちょお、跡部、何言うとるん?」
「跡部先輩、何言ってるんですか。」
思いがけず、忍足と日吉の声が重なる。
「・・・・筋違いやろ、それは・・・・。」
「・・・そうですよ・・・償わせる相手は芦原先輩ではないと思います。」
忍足が続けて、日吉もそれに同意した。
「アーン?お前等いつからそんなに仲良くなったんだ?」
「せやのうてやな・・・。」
「別に仲が良いとかの問題じゃ・・・。」
「・・・・・・・・分かった。」
小さく、ちとせが呟いた。
本当に小さく、落とす様な声であったのに、その一言で一瞬、その場がシン、となった。
「・・・・・・・・どう、したらいい?」
ちとせはその空気にやや怖気付いたが、続けて、跡部に問うた。
「・・・よし。そうだな・・・・じゃあ、今度の日曜、ちょっと付き合ってもらおうか・・・・場所と時間は後から連絡する。」
「・・・・うん・・・・分かった。」
「ちょ、芦原さん!?」
「・・・芦原先輩・・・・。」
またも忍足と日吉が同時に声を上げたその時。
「跡部、医師との話も終わった。今日はこのまま退院しても問題ないそうだ。ただし、2,3日部活は出来ないそうだが・・・・ん?どうした?」
監督が、医師との話を終えて治療室に戻ってきた。
「いえ、何でもないです、監督。」
いけしゃあしゃあと答える跡部。
「・・・?そうか・・・なら、お前はすぐに家で安静にしていろ。家には連絡はしたのか?」
「ええ。とっくに。もうすぐ迎えも来ると思いますので、俺はここで待ってます。」
「ふむ。そうか・・・なら、私達は帰った方がいいな。もう夜も遅い。芦原は、私と来い。車で家まで送ろう。」
「あ・・・はい・・・お願いします・・・。」
そう言ってちとせは監督について行く。
治療室を去り際、
「・・・・・・ありがとう・・・・。」
と、小さく呟いたのが聴こえた。
それは、跡部に、忍足に、日吉に・・・・その場に居た全員に、向けられたものだった。
「・・・・単語だけでも、会話って成り立つんやなぁ・・・・。」
「・・・だな。」
どこかでやったようなやり取りの後、忍足は跡部に、
「で・・・ちなみにやけど、芦原さんに何させる気?・・・まさか手荒な事はせぇへんよな?」
と問うと、
「・・・そりゃあ、体の傷の落とし前、だからな。・・・体で払ってもらうのが筋、ってもんだろ?」
跡部はにやりと何かを企んでいるかのような笑みを浮かべた。
楽しそうだ・・・何だかやけに楽しそうだ!!
(芦原さん(先輩)!!!逃げてー!!!)
その場に居た全員が碧眼の狼の歯牙にかかりかけている緑眼の黒ネコの身を案じずにはいられなかった。
...to be continued.
*何だか跡部の他には忍足と日吉が出ずっぱり・・・これじゃあ逆ハーには程遠い・・・;自分の文才の無さに困ります;そしてやっぱりすっきりまとめられない;;
*っていうか跡部様殴っちゃったよ!!すいません!!(泣;;
*やっと病院・・・そして次は落とし前編(笑)です。
*それではここまで読んでくださった方、ありがとうございます。
宜しければご意見、ご感想などお待ちしております☆