【胃瘻造設術の慢性期合併症:瘻孔形成後】
@チューブ閉塞
注入開始時には白湯を通して閉塞の有無を確認する。また、注入終了時にも白湯でフラッシュし閉塞を予防する。カテーテル型の胃瘻では4〜10倍に希釈した食用酢をカテーテル内に充填する。酢には静菌作用があると言われ、カテーテルの閉塞や汚染を防止できる。カテーテルの汚染が目立つ場合は、付属のブラシなどで内腔を清掃する。
A自己抜去、事故抜去、自然抜去
急性期合併症と同様に抜去の予防が必要である。瘻孔形成後であっても半日〜1日で閉塞すると言われている。万一、抜去が起こった場合にはネラトンカテーテルや吸引カテーテル等を挿入して瘻孔の確保を行う。
Bバンパー埋没症候群(胃内のストッパーが胃粘膜に埋没)
バンパーの圧迫による位置異常で、バンパーが胃の粘膜内、ひどい時には胃壁外に逸脱した状態となる。注入は継続できるが、交換は外科的処置を要する。下図のように、日頃からバンパーの回転を確認することで予防できる。また、常にバンパーの固定の位置も確認する必要がある。ボタン型ではシャフト長が十分に長い製品を選ぶ。
C胃食道逆流(gastroesophageal reflux:GER)、誤嚥性肺炎
噴門部には下部食道括約筋(lower esophageal sphincter:LES)が存在し、食道から胃への食物の移動と胃からのGERを調節している。LES圧の低下、一過性LESの弛緩などが発生要因となる。脊柱の弯曲も原因になる。経腸栄養剤の注入時および注入後30〜60分は上半身を30〜45度以上挙上すること、注入速度を一定に保てるように定期的にチュ−ブの位置や状態のチェックを行うこと、消化管機能改善薬の投与によってGERを予防する。また、難治性の場合には経腸栄養剤の粘度を増したり、固形化したりする。さらに、一時的に経腸栄養を中止することもある。PEG患者での一番の問題はGERによって誤嚥性肺炎を引き起こすことである。
Dサイレント・アスピレーション(不顕性誤嚥)、マイクロ・アスピレーション(微小誤嚥)
本人が気づかないうちに、口腔内の微生物が少量の唾液や飲食物とともに気道内に入ってしまうことを不顕性誤嚥、微小誤嚥と呼ぶ。経腸栄養による不顕性誤嚥の危険因子には、微小な逆流、消化管ホルモンの活性化による唾液・消化液の増加、脳障害によるドーパミン−サブスタンスP系の異常が挙げられる。PEG管理中の患者は合併の危険が高く、重症の場合には適切な治療法がないと言われている。
E胃潰瘍
先端が凸型になった内部バンパーの場合、対側の胃壁に形成されやすい。また、ストッパーを締めすぎている際に内部バンパー周囲に形成されやすいので、この場合はストッパーを緩める。医師の指示の元、抗潰瘍剤が投与される。内視鏡的止血術を行う場合もある。
F下痢等胃腸障害
注入速度が原因となった下痢が起こる場合、注入速度を遅くするのが一般的な対処法である。これは身体拘束を延長することとなりQOLの低下をきたすため、経腸栄養剤を固形化する方法で対処するのが良い場合もある。浸透圧の高い経腸栄養剤の注入は腸管からの水分吸収がアンバランスとなり、腸蠕動の亢進による高浸透圧性の下痢の原因となる。一般的な1kcal/mlの栄養剤の多くは、血管内の浸透圧である300mOsm/Lに近づけて製造されているため希釈しなくても高浸透圧性下痢は生じない。しかし、一部の栄養剤は500mOsm/L以上の高い浸透圧のものもあり、浸透圧の高い製品を使用する場合は予め希釈するなどの配慮が必要となる。また、絶食などにより腸管機能が低下している患者に関しては、通常の浸透圧でも下痢が生じる事があるので注意が必要である。長時間にわたる栄養剤の滴下は栄養剤自体が細菌の培地となり問題を生じることがある。栄養剤の投与ルートは注入後に充分洗浄を行い、清潔な状態を維持する必要がある。
G胃瘻孔部の漏れ
予防としてはこより状にしたガーゼなどを使用し、チューブが垂直になるように位置を是正する。ガーゼにて、漏出した消化液等を吸収する。ストッパーを皮膚から1〜2cm浮かせて、接触させないようにする。
H瘻孔周囲皮膚炎
栄養剤や消化液の漏出が持続することによって、皮膚が常時湿潤するために起こる。また、皮膚が漏れや発汗によって湿潤することで細菌が繁殖しやすくなる。漏れの防止対策、生食での皮膚の洗浄、皮膚保護剤の使用などによって皮膚の保護に努める。
I不良肉芽
カテーテルが皮膚に当たる刺激で皮膚が再生しようとして形成される。カテーテルを一定の方向に固定せず、ストッパーをずらすことで予防する。肉芽が形成された場合には、硝酸銀による焼却、軟膏処置、外科的切除を行う。

2