【胃瘻造設術の急性期合併症:瘻孔が形成されるまでの約2週間】
@出血:創外出血、胃内出血、腹腔内出血
胃瘻増設後、胃瘻を開放していることで胃内からの出血の有無を確認できる。瘻孔からの出血の場合には、バンパーを再度圧迫するか、止血用の短冊ガーゼを軽く瘻孔わきに挿入して止血する。
A自己抜去、事故抜去、自然抜去
バンパー型やボタン型の場合、カテーテルやボタンをかなり強い力で引かなければ抜去することはない。バルーン型では、バルーンの破損などで蒸留水が抜けてしまうと、全く抵抗なく抜けてしまうこともある。意識レベルの低い状態の患者であれば、自己抜去の可能性があるので腹帯やガーゼ等による予防が必要である。術後まもなくの抜去では後述の腹膜炎を起こしやすいので腹膜刺激症状がないか確認し、早めに外科にコンサルテーションする必要がある。
B誤挿入、事故抜去による腹腔内漏洩が原因となる汎発性腹膜炎
内視鏡下で胃瘻を造設した場合、指で腹壁を押した感触と内視鏡の所見のみで穿刺ポイントを決定することから、俗に言うブラインド操作が含まれているため頻度は低いが誤挿入が起こる可能性がある。胃壁腹壁固定術を行っていない場合、術後極めて早期にカテーテル抜去が起こると、胃内容物が腹腔内に漏洩し、腹膜炎が発症して外科的な開腹手術が必要になる場合がある。腹痛・発熱の有無をモニタリングし、異常の早期発見に努める。
C胃、周囲臓器の損傷
これも上記と同じ、ブラインド操作による合併症で、腹膜炎だけでなく、血管や肝臓を損傷して大量出血すると致命傷である。また、穿刺の際に胃壁を裂いたり、穿刺を何度も行っているうちに胃瘻と別の場所の胃に穿孔をきたすこともある。この場合、胃瘻造設後に胃内容物を排出させて、胃を減圧すれば大事に至らないことが多い。胃の穿刺の際に反対側の胃壁を損傷して、出血することもあるので注意が必要である。多くの場合には胃内視鏡にて確認できるが、胃瘻造設後1日は胃チューブの留置や胃瘻の開放によって、胃内容物を自然排出させて出血の確認と胃の減圧をすることが望ましい。
D胃・腹壁間離開による胃液・栄養剤の腹腔内漏洩、気腹
胃壁・腹壁間が離開すると、瘻孔が形成されないだけでなく、胃内容物の腹腔内への漏洩の原因となる。腹腔内漏洩が生じることによって腹膜炎が引き起こされる。瘻孔作成の本穿刺に先立ち、数箇所で縫合固定(胃壁腹壁固定術)することによって、本穿刺が容易に行えるだけでなく、瘻孔形成前に胃・腹壁間の離開を予防できる。
正常の腹腔内には空気が入っていることはないが、空気が入っていることを気腹と呼ぶ。腹部X線写真の立位や臥位で明らかになる。気腹は全症例の30〜40%に認められる。胃瘻造設時における気腹は内視鏡の送気の結果であるため病的所見ではない。そのため、腹膜刺激症状がない場合には特に処置の必要はない。2〜3週間で認めなくなることもあるが、1ヵ月以上認めていることもある。
バンパー管理の例…ボタン型はシャフト長(ストッパー間の距離)が変えられない
Eイレウス
開腹せずに内視鏡下手術を行った場合でも生じる。2時間ごとの体位交換やギャッジアップにて予防する。腹部症状や嘔気・嘔吐の有無、排ガス・排便状況のモニタリングが必要である。
F胃瘻孔部感染
チューブに口腔内や胃・食道内の細菌が付着することによって、胃瘻作成時に瘻孔周囲の皮下組織に感染が起こることによって発生する。そのため、術前の口腔ケアにて感染予防を行う必要がある。瘻孔周囲の皮膚の発赤と排膿に注意し、その他、腫脹・硬結・疼痛等の異常の早期発見に努める。発赤や排膿があれば、瘻孔周囲の皮膚を強く押して、皮下に膿瘍がたまらないように膿瘍を押し出すこと(ドレナージ)が必要となる。これにより、多くの瘻孔感染は自然治癒するが、排膿が十分でない場合には、瘻孔の皮膚に少し切開を加えたり、拡張して、膿瘍が流れ出やすいように処置を施すことが必要である。

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