大学で図学を教えている。いつもは課題の説明だけして、あとは学生の作業を見回ったり前の週の課題の採点をしたりしているのだけれど、今日は学生と同じ課題を自分でもやってみようと思い立ち、おもむろに教壇の上でT定規片手に格闘をはじめた。実に18年ぶりの図学の課題である。
今やっているのは立体図法といって、2次元の図面に高さや奥行きを与えて立体を作図するというもの。卒業後勤めた設計事務所でみっちり手描き図面を仕込まれたこともあり、うちのクラスでは特に手描きの流儀について、普通は大学では教えないことも含めて力を入れて教えている。
ところが実際のところ、独立してからはスペースの関係もあり、うちの事務所でも作図はほぼすべてCAD化している。学生に手描きのこだわりを語りつつも、自分ではマウス片手に仕事している日々を少し反省し、ひとつ初心に返ってみようと思ったのだった。
それにしてもT定規を片手にケント紙に向かうこの作業は実に楽しい。久しぶりの手描きでの製図に思わず学生そっちのけでのめり込んでしまった。
CADではコンマ数ミリ単位での作図精度にこだわるが、手書きでは簡単に数ミリ単位の誤差が生じる。それゆえに、そこに職人(ドラフトマン)としての腕の見せ所が出てくる。腕が鈍ったか、なかなか思ったような精度の線が描けなくて苦労したけれど、図面を描き上げたときの達成感はやはり手描き図面ならではのものだ。
また(当然ではあるが)、それでも自分が1年生の時よりは比べようもないほどに図面が達者になっていることもまた確認できたりして、年輪というか18年の時間の重みを感じたのだった。
継続は力なり。そして歴史は繰り返す。教え子のうち誰かがまた大学に戻ってきた暁には当時を思い出し、また1年生の図学の課題に挑戦してもらいたいものだ。