カポーティの短編集。村上春樹訳。「子供/無垢」をテーマに編集されており、「クリスマス/誕生日」を舞台にしたものが多い。幸せな子ども時代の中でも最も幸せな日ってことで、小説の舞台に相応しいってことですかね。もちろん、そううまくはいかないのですが。
全体として、子供時代を懐かしむような感傷的な話が多いです。そして、それが失われていく話もいくつかあります。こういうのは好きだったはずなんですが、割りと面白いのがいくつかあったという程度でしたね。一番成功しているのは「クリスマスの思い出」でしょうか。この短編集ってあんまりいいの入ってないんですよね。カポーティ読むなら新潮文庫の『夜の樹』がオススメです。あとは『冷血』と『草の竪琴』かな。
・「誕生日の子どもたち」
田舎の町にロリータがやってきて、町中の男達を虜にする話。わずか10歳なのですが、まるっきり大人のように振る舞い、誰もがその迫力に従わずにいられないという、魅力溢れるお嬢様の話です。これだけとるとただの微妙な喜劇なのですが、このお嬢様がいきなり車に轢かれて死亡するところから始まる、というのがミソです。そこから回想していくんですね。
面白いかと聞かれれば、「まぁまぁ」としか答えられませんが、ロリータ描写はかなりのものです。ロリータというと嫌に俗っぽくなりそうなものですが、カポーティの文章には圧倒的に品性がありますね。
・「感謝祭の客」
幼いころの過ち話。主人公である金持ちのいじめられっ子が、貧乏ないじめっ子が自分の家の感謝祭に来た時に逆襲しようとして大失敗という話です。主人公の唯一の友人がお婆ちゃんというのがいい感じです。またこのお婆ちゃんがまるっきり善良で子供みたいでいいんですよね。
このお婆ちゃん(ミス・スック)は自伝的内容からきており、実際に作者の年の離れた従兄弟だった人物で、他の作品にも何度か登場します。
けっこうこういう「幼いころの過ち話」は好きです。ヘッセの「少年の日の思い出」なんかがメジャーですかね。
・「クリスマスの思い出」
クリスマスを舞台にした「失われた楽園/子供時代」の話。全く持ってベタな話なんですが、クリスマスの雰囲気がいい感じです。この短編集の中では一番でしょう。カポーティの全短編の中でもベスト3には入る名作です。
・「あるクリスマス」
「クリスマスの思い出」とは間逆の不幸でシリアスなクリスマス話。田舎の町に預けられていた子供が、クリスマスだけ都会に住む両親の所で過ごすことになるのだが、お互いにすっかり溝が出来てしまっており、打ち解けあうことが出来ない。まぁ今までほおって置いてイキナリというのも無理な話です。両親もほとんど反省しておらず、エゴむき出しで子供に向かってますから。
こういう両親のエゴにより、暴力的(?)に子供が無垢さを奪われる話は居たたまれないですね。現実にも良くあることなんでしょうが。
・「無頭の鷹」
謎の美少女画家に翻弄される中年男性の話。割りとファンタジー入ってます。
・「おじいさんの思い出」
田舎の農園で暮らしていた子供が、両親の意向で都会に移される話。祖父母との別離が焦点になります。これも失われた楽園モノですね。カポーティの中だ祖父母は子供の味方なんですかね。