林檎を食べたら、
もう楽園には戻れない。
それを知っているから、
あたしは決して口にしなかった。
その掟を守っていれば、
いつか報われ
神様が空腹を満たしてくれるのだと信じていた。
彼女たちは
そんな掟など無視して木によじ登り、
林檎をほおばっている。
そのために楽園を追い出され、
自らの罪を後悔していると言いながらも、
両手一杯にもぎ取ってきた林檎を貪り食い続けている。
不思議なコトに
林檎がなくなっても、
なぜか蛇が彼女たちの元へ林檎を届ける。
あたしは楽園に残り、
実をつけない林檎の木の下で、
彼女たちを憐れみ、
彼女たちをうらやみ、
空腹に耐えている。
林檎の木におねだりをして、
木の枝を少し折って食べた。
木は傷つき、
あたしの口の中も傷ついた。
林檎の甘い味を知らずに、
あたしは飢えてひからびる。
かろうじて、
自らの誇りと林檎の木のあたたかさだけが、
カラカラの喉を潤す。
神様、いったい何が正しいのでしょう?
林檎を食べてはいけないのなら、
どうしてあたしに空腹という感覚を与えたのですか?
あたしが食べたいのは、
この実のならない木のてっぺんに
たったひとつだけ実る林檎。
それだけなのに。

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