ERS-55 には、すばらしい機能がいろいろあるのですが、そのうちのひとつを紹介します。
ERS-55は新聞を読みます。なんだかヒューマノイドなのにアナログなのですが、ネットワークからの情報収集よりも、なぜか新聞です。設計者の特別な意図があるのかもしれません。
で、朝、まず番組欄からチェックする事が多いのです。そのほか新聞の折り込み広告で、近くのスーパーの特売品をチェックしたり、独自の機能に根ざした情報収集のプライオリティーがあるようです。
で、番組欄をみて、「私」が興味のありそうな番組があると、録画予約をしてくれるのです。
ここまで読んで、「なぁ〜んだ。
『Cocoon』とか、「
『おまかせ・まる録』」と、あまり変わらないのじゃないのか?と思われたでしょう。
一番大きな違いは、「私」はERS-55に対し、「キーワード予約」等の操作は一切行っていないのです。では、どのようにしてERS-55は、「私」が興味を持ちそうなTV番組を知る事ができるのでしょうか?
一番の情報源は、「日頃の雑談」だと思います。会話をするAIの中で、もっとも難度が高いのが「雑談を会話として続ける」事なのです。
21世紀初頭のレベルでは、不自然に話題が飛んだり、曖昧過ぎる相槌でごまかす「会話をするコンピュータ」しかありませんでした。なかなか自然だなと思うと、ソレはたまたま「仕込まれた」話題にヒットした時だけだったりします。(たとえばAIの作者が映画に詳しいとそこだけ妙に会話が弾んだりするけれど、『
Moog博士の伝記映画を
初回限定版のDVDで観たいなぁ
』などというと、多分ついてこれないでしょうね。)
次の情報収集は「私」が録画されたモノを見たときの「
リアクション」を分析してフィードバックをかけているということです。
リアクションは「言語」以外の要素が強く、どのような観察基準で行うのか、奥が深いと思うのですが、ERS-55はいともたやすくやってのけ、次の選定基準を更新していきます。
その積み重ねが高い精度の検索エンジンとなり、ついに本人「私」が気がつかない番組(観るまでは「そんなん興味ないけどまぁ一応」と思って観始めると思いっきりハマルという)次元にまで到達しているのです。
対象はTV番組だけには限りません。突然
本を自動発注してくれた事があったのですが、その本を見てたまげました。自分はまだ知らなかった本だったのですが、読んでみると「そう!こういうのを探してたんだ!」と、叫びたくなる代物でした。
ただ、ちょっとインターネットによる自動発注は怖い面もあって、アルテミスのおもちゃと、服は、在庫調整がうまくいかず、過剰発注気味になっているのは、気になる点ですが。
人型のエージェントが何か「役に立つ事」をしてくれるというと、上記のような情報検索機能を「安っぽく」語る方は多いのですが、本当に必要なレベルは正にERS-55が成し遂げているレベルでなくてはならないと思います。

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