去る9月13日、赤坂グラフィティにて行われたライブイベント【Sweet Soul Radio TOKYO Vol.5】でのライブの様子を、簡単ではありますがお伝えします……。
この日のマリ子さんは1番目。
黒の上着に黒のパンツスタイルといった、いつもながらにシックな装いで、サポートの田中啓介さん熊谷太輔さんとともに登場です。
少し緊張の面持ちでMCも少なめに歌いだした1曲目は『キッシュロレーヌ』。
カッティングギターに軽快なリズムで始まったこの曲をライブで演奏するのは久しぶり。初めて聴いた方も多いのではないでしょうか。「目を開けるのはいやだなぁ」と、ベッドの中で現実よりも夢の中でいつまでもまどろんでいたいと願う女の子の、少し憂鬱な気分を綴った歌。
「Don't waike up」と、心の中でママに訴えているちょっと甘えん坊の女の子の姿が目に浮かんでくるようです。
途中のブレイクで、マリ子さんの歌にフレッドレスにからまる田中さんのベースが曲全体のアクセントになっている、実に表情豊かな一曲。
最後の決めもバッチリと、実にパンチの効いた、マリ子さんの声を多面的に味わえるアレンジとなっていました。
一曲目を歌い終わったところで「こんなに大勢のお客さんの前で歌うのは……」と、そこまで言ったところで緊張の糸がほぐれたのか、思わず言葉に詰まってしまったマリ子さん。それでも一呼吸するとそのまま会話を続け、途中で突然「行くか!」と気合を入れて次の曲へ(うん、こんなところもマリ子さんらしい)。
「これはプロポーズをこんな感じでしてみるのはどうですか?なんていう感じの曲です」と歌い出したのが、タイトル『山登り』あらため『パラボラ』。
これは前回のライブで初披露した曲ですが、二回目にしてもうすでにメロディが耳について離れないほど、親しみやすく気持ちのいい一曲。
大好きな人と山に登りながら、「人生の道のりもこんなふうに一緒に進んでいけたらいいね」と、やまびこのようにこだまする想いを歌にたくしたものです。
広がる景色になんだか心が嬉しく弾んで、「ラッキー!ラッキー」「ヤッホー!ヤッホー!」と思わず叫びだしそうになってしまう。大好きな人と一緒にいられる至福感がぎゅっと詰まったハッピネスで、それでいて「この幸せがいつまで続くのだろう」という、一抹の寂しさまでをも含んだ歌。
マリ子さんの空にまで届いてしまいそうな伸びやかな歌声を聴いていると、まるで目の前に山の頂上からみわたす景色がひろがっていくように思えてきます。
さて、ここでメンバー紹介。それぞれ、今後のライブのお知らせをしたあとに世界は一転。
明るく澄み切った光にあふれる世界から、街がすっかり表情を変えてしまう、宵闇の路上へと移っていきます。
そうして歌われたのが『街の灯』。
会いたくても会えなくても、結局は変わらない言葉。
いつまでも、あてもなくあなたを好きなこと……。
夜道を歩きながら様々な想いに揺れ、思わず涙し、「誰も見ないで」と心の中でつぶやいている。
一人歩く夜の路上で、ふと陥ってしまう、何とも切なく、そして悲しい想いを情感豊かに綴っています。
低くささやくように歌う出だしから、サビではハイトーンのキーに一変。
マリ子さんの声の響きもいっそう増して、思わず心も共鳴し、琴線が震え出してしまうほど。
彼女の歌声がいかに非凡であるかを、あらためて思い知らされる一曲です。
ここで次回10月10日(赤坂グラフィティ)、11月11日(烏山TUBO)(おや、両日ともゾロ目ですね!)ライブのお知らせをしたあと、おなじみとなった赤坂グラフィティのライブで緊張した時のリラックス方法を教えてくれたマリ子さん。
実は彼女、ステージからちょうど真正面に見える、かのエリック・クラプトン氏のお写真に「最近どうよ」なんて語りかけたりするのだとか。その他、リハ待ちの時などには「ここの壁がなんか畳イワシみたいに見えるなぁ」なんて思いながら待っていたりもするそうです。
うーん、クラプトンは逆に緊張しそうですが、畳イワシは癒されそう(笑)。
そんな話をしているうちに、少し新しいアルバムの話に。
「まだはっきりとした日程は言えませんが、でも楽しみにしていてくださいね」というわけで、ずいぶん長らくお待たせしてしまいましたが、皆さん期待していてくださいね。
そしていよいよ3曲目。
青春時代の甘い思い出を歌った曲『スイーツ』。
……蛇イチゴを蹴散らした夜にお気に入りのボタンをバッグに縫い付けた。きつく……
なんという表現でしょう。少女時代の女の子の気持ちを、こんな言葉で鋭く抉り出しながらも、その気持ちを美しいメロディに乗せて表現してしまうマリさんの才能に改めて敬服してしまいます。
この歌の曲調は緩やかで、じわじわと染み入るようなメロディラインが特徴。ともするとあっというまに聞き過ごしてしまいそうになりますが、その歌世界の中には実に繊細で折れそうで、それでいて強くて激しい少女の情感がびっしりと詰まっています。
いつの日か、この曲の歌詞を踏まえた上でじっくりと聴いていただけたらいいなぁと、この演奏を聴きながらあらためて思ってしまいました。
最後、もてあました感情を放り投げてしまうように切り上げたブレイクもばっちり決まり、余韻が残る一曲に。
「私は実は、意外とメガネフェチなんです」と、思わぬ打ち明け話で始まった4曲目は『本当はバレンチノ』。
アップテンポで歌われるキュートな歌は、今回レゲエ調のアレンジになっています。
メガネをかけて白衣を着ている研究者タイプ?の彼だけど、でも私にとってはバレンチノみたいにステキな人!
という、メガネ男子必聴の一曲です。
この曲ではパーカッションの熊谷太輔さんがコーラスを歌ってくれていますが、二人の声の愛称もバッチリ。
後味の良い一曲となりました。
ここでマリ子さん、少し自己紹介を。
「私は中学の頃から兄の影響でギターを弾き始めたのですが、高校になると女の子バンドを組んで、ハードロックなんかもやっていました。それからその流れで女の子バンドでヤマハのコンテストに出たりして。そんな感じで女の子同士でキャーキャーやっているのも好きなんですが……」と言いながら、「でも今は“友達の彼を好きになってしまったわたし”なんていう歌詞を男の人に歌わせたりなんかして、いやぁ申し訳ない。でもよろしく!」なんて言いながら、思わず太輔さんと顔を見合わせて大笑い。
そうしてすっかり会場がマリ子ワールドになったところで次の曲は『月と私の秘密』。
これはアルバム『氷河期』に収められていた曲ですが、この日は全く新たなアレンジに生まれ変わっていました。
まるで螺旋階段を行ったり来たりとかけめぐるように音階が移ろっていく旋律が実に独特で、マリ子さんの歌世界の幅の広さをあらためて思わさせるメロディラインに脱帽です。
「手紙を書かない私が手紙を書いたんだから大事にしてね」って言って渡したのに、帰り道の途中で「やっぱりまだ読まないで」って思ってあわてて駆け出した女の子。彼女のドキドキが伝わった月までもが一緒に駆けて、「まだ間に合う?」「まだ封を開けないで」と、必死になって彼の後を追っていく。何とも愛くるしくて、思わずこちらまで月になったような気持ちになって、ずっと彼女を見守ってあげたくなってしまいます。
まるで映画のワンシーンのように情景が目に浮かぶマリ子さんらしい一曲です。
歌い終わったマリ子さん、「今、お礼を言いながら、ちょっとお礼の気持ちが足りなかったなと思ったので、あらためて、ありがとうございました」ともう一度言い直していました(笑)。
そして最後。
「みなさんは毎日生活していて、こんな気持ちは誰にもわかるはずがないよな、って思うような辛いことってありますか?」と、突然語りかけたマリ子さん。「私も何回かはありましたけども、でもそれは本当に誰も分かち合えないのかもしれないけれど、みんながそう思っているということは、みんな仲間なんだなって、最近思うようになったんです」という言葉で歌われたのが『on the grass』。
熊谷太輔さんの響き渡るジャンベのリズムで始まったこの曲は、今ではライブの最後を飾る曲として定番になっていますが、でもやっぱり聴くたびに心が洗われ、そして思わず胸が熱くなってしまう曲です。
本当に、なんという歌でしょうか。
これは新しいアルバムでも最後に収められる予定ですが、ライブとはまた違ったアレンジになっていて、広がる草原の世界も新鮮な息吹を感じるものになっています。
こちらもぜひお楽しみに。
最後、太輔さんのジャンベがはるかかなたの大地へと響き渡って消えたところで、ライブは幕を閉じました。
この後は笑顔と優しい歌声が印象的な石原千宝美さん。そして、独特のMCと思わず引き込まれてしまう繊細でいて力強く、そしてちょっとだけ毒のある、不思議な魅力にあふれた歌で観客の心を掴む石野田奈津代さんへとバトンタッチ。
とても充実した、すばらしいライブとなりました。
セットリストは以下の通り。
1.『キッシュロレーヌ』
2.『パラボラ』
3.『街の灯』
4.『スイーツ』
5.『本当はバレンチノ』
6.『月と私の秘密』
7.『On the grass』
以上7曲です。
この日の最後、バックステージパスを服に貼ったままのマリ子さんにスタッフの方が「こちらで捨てておきますよ」と声をかけたところ、「あ、実はこれ、大切にノートに貼っているので、もらって帰ってもいいですか?」と言っていました。
何気ないワンシーンでしたが、なんだかとてもマリ子さんらしいやり取り。
そんな彼女が紡ぎ出す歌の世界。
どうぞ、興味をもたれた方は、ぜひぜひ、まずはライブを聴きに来てくださいね。
(photo & reported by rainbow)

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