100年に1度の世界経済危機と言われた2007〜2008年のリーマンショックのときは、私は、激動する歴史の真っ只中に飛び込んだような感覚を持ったが、今年もまさにそうだった。今回の欧州債務危機は、リーマンショックの延長線上にあるが、国家や経済圏の危機という人類が経験したことのない新たな試練だ。社会主義経済に打つ勝った自由主義経済は、金銭や便益という利益を上げるのに夢中になり、民間、国家を問わず、実体経済の何倍もに信用をふくらませ、とんでもないバブルを生み出していたわけである。
そもそも人間に限らず生物の進化は、やってみて、環境適合性がない部分は淘汰されるという仕組みで進む。やってみてという挑戦が大きな進化を促してきたのだが 失敗は必ず起きる。またそのような失敗は、生物が、最適性を求めて可能な限りの実験を試みるための多様性を維持するのに必要なことでもある..と私は考えている。
これは、津波危険地域に住み続けている人類、放射能リスクのある原子力発電を利用している人類、戦争リスクの中で一定の政治的、軍事的なバランスを保っている人類にとっての共通点であり、失敗は、ある確率で必ず起きる。そんな「人類の失敗」が多い年であった。そのような限りない人類の実験による失敗がなぜ増えているのか? 人類の人口が70億人と地球の環境容量を超えたバブル状態になっているからとの見方もできる。その人々の限りない要求を満たそうとすれば、経済のバブルも発生するし、生存限界集落もできるし、民衆革命も多発せざるを得ないのではないか...と。
こんな中で、例えば株式運用で「自分だけよい子でいる」のは至難である。というわけで、私も、気持ちの上では、ギリシャやイタリアの首脳などに負けない悔しい思いも多かった。しかし、私は多くの場合、観察者として、このような世界の動きをリアルタイムで見たり、体験することができた。この意味では、意義深い1年であったと思う。
2011/12/30 15:22 日経 日経平均2011年は17%安
リーマン以来の下落率 年末ベースで29年ぶり安値
2011年大納会の東京株式市場で日経平均株価は小幅反発し、今年の取引を終えた。大引けは前日比56円46銭(0.67%)高の8455円35銭となり、年間では1773円安と17.3%下げた。年末ベースでみると1982年以来29年ぶりの安値。年間で下落するのは2年連続で、下落幅と下落率はともに米金融大手リーマン・ブラザーズが破綻した2008年(6448円、42.1%)以来3年ぶりの大きさだ。3月11日の東日本大震災の影響に加え、欧州債務問題、世界景気の減速、円高が相次ぎのしかかり、日本を代表する銘柄が軒並み軟調に推移した。東証1部全体の時価総額(政府保有株を除く)は251兆3957億円と昨年末と比べて54兆円(18%)減った。時価総額の減少は08年(196兆円減)以来3年ぶり。東証の売買は深刻な水準まで低迷し、日本株の魅力低下に懸念が強まった1年だったが、12年については企業業績の持ち直しなどから、年後半に株価が回復するシナリオを描く市場関係者も多い。
【東日本大震災で相場が一変】
今年の相場の大きな転機は東日本大震災だった。年初は米国景気の回復期待から2月21日に高値(1万0857円)をつけるなど堅調に始まったが、震災で状況は一変した。震災直後の3月14日に日経平均は633円下落、福島原子力発電所の事故の深刻さが伝わった3月15日には東芝や日立など主力株が相次ぎ制限値幅の下限(ストップ安水準)まで下げ、日経平均の下げ幅も1000円を超えた。震災によるサプライチェーン(部品供給網)の寸断や生産停止なども日本株の重荷となった。そうした中で相場の支えだったのは震災後も日本株を買い続けた海外投資家だった。米国がQE2(量的緩和第2弾)を打ち出した昨年11月から5月末にかけて、過去最長となる29週連続買い越しを記録。震災で急落した日本株に割安感を覚える海外投資家は多かった。
【欧州問題と円高の追い打ち、主力株が歴史的安値】
夏場以降の相場の方向感を決めたのは欧米の債務問題だった。ギリシャ債務問題や8月の米国債格下げに加え、6月末のQE2打ち切りや世界景気の減速懸念などが重なって、株価は世界的に急速な調整局面へと向かい始めた。日経平均は大震災後の生産活動の持ち直しや復興需要への期待感から、7月に1万円台を回復したが、8月以降は欧米債務問題をきっかけに海外投資家が日本株売りを強めたことで下降局面に入った。主力株が相次ぎ今年の安値を更新したことから、8月の日経平均の下落幅(877円)、下落率(8.9%)はともに月間では今年最大となった。さらに1ドル=70円台の超円高が追い打ちをかけた。景気減速に円高も重荷となり輸出企業の業績が急速に悪化。パナソニックは30年ぶり、ソニーは24年ぶり、トヨタは15年ぶりの安値をつけるなど日本を代表する企業の株価が歴史的な低水準に沈んだ。
【深刻な売買低迷、ガバナンス不信も】
欧州問題への警戒感が一段と強まった秋以降、市場を見舞ったのは投資家の売買手控えによる取引所の薄商いだった。損失隠しを公表したオリンパスの問題も、海外から日本のガバナンス問題に対する不信感を増幅させる結果となった。東証が売買活性化のため11月21日から午前の取引時間を30分延長したが、効果は上がらなかった。12月の1日当たりの平均売買代金は概算で8524億円と03年6月(8262億円)以来、8年半ぶりの低水準となった。今年の東証1部の売買代金合計(立会外取引を除く)は前年に比べて15兆3076億円減の310兆6069億円と4年連続で減少。04年(295兆1794億円)以来、7年ぶりの低水準となった。ただ、市場では新たな物色の手掛かりが見えてきた1年でもあった。交流サイト(SNS)関連など中小型株や株価水準の低い低位株の商いは活況で、今年の東証1部の売買高は同68億株増の4781億株と2年ぶりに増加した。来年の日本株について、引き続き欧州問題と円高が重荷になるとの見方は多いが、「年後半には来年度の国内企業業績の改善をとらえ、リーマン・ショック後の高値を回復する」(高橋和宏・大和証券投資情報部長)との声も聞かれる。〔日経QUICK〕
2011/12/30 7:01 日経 「誤算の年」に光った日本企業 編集委員 梶原誠
「やけどを負った予言者たち」。米個人投資家向け雑誌のバロンズが、こんな記事を掲載していた。今年は名うてのエコノミストやストラテジストがこぞって市場の予想を誤ったという、当人たちにとっては苦い内容だ。
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関連記事 ・12月17日英エコノミスト106面「『日本株式会社』はなぜ外国企業を買いまくるのか」
・12月20日日経朝刊8面「世界のM&A縮小」
・12月24日米バロンズ・オンライン「2011年、やけどを負った予言者たち」
・12月28日日経朝刊17面「個人投資家、苦心の1年」
・12月29日日経朝刊1面「海外M&A過去最高」
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顕著だったのが米国債市場。米景気の回復を前提に、10年債の利回りは昨年末の3.3%から上昇するのが大方の予想だった。ところが1年後の今、利回りは逆に約2%に低下している。欧州の債務危機のあおりで米景気は大きく下振れした。
■損失が相次いだ世界の投資ファンド
「誤算の年」が暮れようとしている。投資家もさんざんな目にあった。世界のヘッジファンドの運用成績は、リーマン・ショックに見舞われた08年以来3年ぶりのマイナス。投資先である金融・資本市場も商品市場も世界的な景気の変調で混乱し、損失を計上したファンドが相次いだ。市場の波乱は経営心理の萎縮に連鎖する。世界の企業によるM&A(合併・買収)は10〜12月中旬で、7〜9月に比べて約3割減り、前年同期比でも4割以上減った。企業の現預金は米国、欧州とも過去最高の水準に積み上がっているが、景気や市場の先行きに確信が持てない経営者は決断をためらっている。ただ、日本企業は例外だ。海外企業の買収は今年5兆円を超え、過去最高になった。人口の減少でしぼむ内需や電力不足に危機感を抱いた経営者は、成長する新興国の市場開拓を急いでいる。日本企業のファイティングポーズは外国から新鮮に見える。英誌エコノミストは今月の記事で「外国のゴルフ場や映画スタジオを買いあさった1980年代とは違う。堅実な会社を拡大する市場で買って品ぞろえを補っている」と分析。「日本の産業がひそかに国際化を進めている」と持ち上げた。今年は、日本の投資家も翻弄(ほんろう)された。1位・東日本大震災、2位・欧州危機が深刻化、3位・東電の福島原発事故、4位・超円高、5位・米債務問題――日本経済新聞社が個人投資家に資産運用に大きな影響を及ぼしたニュースを選んでもらったところ、上位は暗い話ばかり。
■危機を改革のバネにする日本企業
日経平均株価は年初から2割近く下げた。だが最近のニュースにちらつくのは、危機で萎縮するのではなく危機を改革のバネに使う日本企業の姿。世界と同様に誤算続きだった日本の株式市場だが、来年は会社の選びがいがある市場になる可能性を秘めている。

2011年12月30日 08:50 インタビュー:欧州銀から7兆円の売却申し出 =三井住友FG
[東京 30日 ロイター] 三井住友フィナンシャルグループ(8316.T: 株価, ニュース, レポート)の宮田孝一社長はロイターとのインタビューで、経営不振の欧州金融機関が進めている資産圧縮について、今年度にすでに7兆円の売却申し出を受けていることを明らかにした上で、同グループとしてはドル調達の範囲内で買収を進めていく方針を示した。金利低下局面で業績が好調の市場営業部門の下期の運用見通しについては、引き続き米国での金利低下が見込まれるとし、米国債での運用に勝機があるとの見通しを語った。インタビューの詳細は以下の通り。
――欧州債務危機は邦銀にとってどのようなチャンスになるのか。
「欧州系金融機関がアセットサイズを縮小させてきており、邦銀からみると、色々な世界的なブルーチップ(優良企業)からの借り入れのアプローチが増えている。それも一定の利ザヤをもらえるビジネスが増えている。もうひとつは即物的に、貸出資産を買わないかという申し入れも来ている。すでに今年度入って7兆円の規模だ。われわれのポートフォーリオの多様化や拡大に資して、結果としてトップラインの収益が増えることになる。こうした面はチャンスだ」
――ドル建て海外資産を買収する際のリスクは何か。
「まずひとつはドルの金繰りだ。リーマン・ショック以降のインターバンク市場の特徴は、民間同士の資金のやり取りが縮んでしまっていること。このため、われわれの信用が比較優位にあったとしても、市場が小さくなってしまっているので慎重にドルのファンディングをしておかなければならない。そのための工夫もしている。例えば、年に2回発行している海外でのドル建て社債などだ。1回で20億ドルぐらい調達しているが、こうしたことを地道にやりながらファンディングに自信のある範囲で海外資産を増やさざるを得ない。買収する資産にも制約が生じる。社債を発行しても一番長くて10年債だ。それを超える長いアセットの買収は相当に慎重に考えなければならない」「もう1点は、リスクがわれわれに計測でき、把握できるものでなければなならない。できれば、われわれの知見がある地域のローンであることが望ましい。それは、北米やアジアだ。もうひとつは、その地域の経済が減速しているとか、成長率がマイナスの地域の資産はクレジット的に取れない。7兆円の売却申し出があると言ったが、実際はまだ1000億円ぐらいしか買っていない。海外資産売買の需要と供給の来年度予想をしてみたが、まだまださまざまな案件が出てきそうだ。ドルの資金繰り制約や需給を見ながらじっくり見極めてやっていく」――市場営業部門が好調だ。2012年はどうか。
「市場営業部門は昨年度、業務純益で3300億円を稼ぎ出した。今年の予算は800億円下げた2500億円だが、現時点では大幅に上回って推移している。上期は日本の金利がほとんど動かなかったが、米国では大きく金利低下が起きた。日本国債の売買益は上がっていないが、米国債で収益が上がっている。米国債はまだ金利低下の余地があるとみている。一方、日本国債は大きくは金利が動かない年になると思っている。今のところは米国債にチャンスあると思っている。ただ、われわれは生保などとは異なり、1年間の投資計画など立てない。もう少し短いタームでリスクは何か、チャンスは何かというのを見ながら、ある意味豹変するのがわれわれの持ち味だ。従って、気が付いたら降りているということもあるかもしれない」
――日本国債のリスクは
「われわれが持っている日本国債の平均年限は2年だ。今後、日銀は金融緩和政策の方向に進むことはあっても引き締めに向かうことはないだろう。この程度の年限で持っていれば逃げ切れる。このため、日本国債では、われわれは大きくはもうからないだろうが、リスクはほとんどない状態にポジショニングを変えてしまった。日本国債のリスクは、ずっと言われてきているが、債務危機が理由となって売られたこともなければ、格付けが下がったと言って売られたこともない。確かに頭の片隅にあるテーマではある。問題は、(日本国債危機が)いつ実現するのかということだ。その引き金になるようなイベントがない限り、現在の小春日和というか、小康状態が続くイメージを持っている。しかし、リスクがないかと言えば、リスクはあるので、気が付いたらデュレーション短くしてしまっているという状況なのだと思う。何が(危機の)発端になるかというと、誰かが売り仕掛けた時に始まるのだろう。売り仕掛ける人は日本国内にはいない。海外のヘッジファンドだとすると、売りを正当化する理屈がその時にあるかどうかだ。さらに言うと、日本の機関投資家が本当に動揺するかどうかと言ってもいい。今、そのようなステージにあるとは考えられない」
――証券会社のホールセール(法人向け)業務が苦戦する中、グループのSMBC日興証券をどのように強化していくか。
「結果としてホールセール業務が十分に育っていないがために、業績が好調に推移しているという面はある。しかし、もともと日興のホールセールを育てるために考えたことは、基本的にはわれわれの日本の顧客にプラスアルファのさまざまなサービスを提供できるようにすることだった。大きくレバレッジを掛けて投資商品を作って、それを合成して格付けを上げるという世界ではなく、企業が資本調達したり、社債を発行したり、円高なので海外企業を買収したいという業務のサポートだ。今後3年間は、こうした業務を集中的に強化し、そこだけでいいので育てていく必要がある」
――海外のM&A戦略の考え方は。
「海外資産を買収する話の中で、実際にビジネスの話が持ち込まれているのは事実だが、今は、これやりたいというのがない。一時期、北米の銀行というテーマもあったが、今は興味が相当薄らいだ。米国の金融規制や不動産へのエクスポージャーなどのリスクを考えざるを得ない。われわれの業務とのシナジーも見えない。強いて言えば純投資になるが、われわれは長い純投資をやる会社でもない。そうなると、アジアの投資信託業務とか中堅・中小企業にどのようにアクセスするかなどは、日本企業がビジネス展開していることを考えると、興味がある。興味の中心が北米よりアジアに移ってきている」
2011/12/28付日経 個人投資家、苦心の1年 震災・欧州、市場揺れる
2011年、個人投資家は東日本大震災、原子力発電所事故、ユーロ危機、円高などに翻弄された。株式相場の低迷で資産を目減りさせた投資家が多い一方で、減少を食い止めたり、逆に増やしたりした人もいる。個人投資家の実像を通して、激動の一年を振り返った。3月11日午後、岐阜県の主婦、田中香さん(仮名、45)は自宅のパソコンで株式相場をチェックしていたときに「異変」を感じた。東日本大震災による岐阜県の震度は3。「長い周期の揺れで、目まいと勘違いした」程度だったが、モニターを見ると、日経平均株価のチャートが急落していた。
<「自己責任」戒め> 田中さんは週末を控えた機関投資家などの手じまい売りが膨らんだと思い、地震によるろうばい売りが原因だと気づかなかった。投資歴は9年、約150銘柄の株式を保有する。株主優待を目的にした長期投資のスタンスなので、少々の株価下落には動じない。震災以降の相場下落は買い時とみて、狙いをつけていた株式を買った。だが夏場に向けて回復した株式相場は秋以降、海外情勢に引きずられる形で低迷。田中さんの持ち株は含み損が膨らみ、金融資産は約30%減った。「震災による業績悪化や自粛ムードで優待制度を見直す企業が多く、散々な一年だった」と嘆く。国内外の金融市場が大きく揺らいだこの一年。日経生活モニターに登録する個人投資家を対象に、自らの資産運用に大きな影響を及ぼしたニュースや出来事は何かをアンケート調査したところ、東日本大震災や欧州危機など、災害や海外情勢に関連する項目が上位に並んだ(表参照)。
広島県の会社員、石川剛さん(仮名、33)は混乱する欧州情勢から目が離せなかった。外国為替相場は4月半ばから円高・ユーロ安が進行。5月に満期を迎える約13万円分のユーロ建て定期預金はユーロ建て普通預金に移し替え、一時的にユーロが高くなった時期に円に替えようと考えた。ところが4月下旬は仕事が忙しく、連日くたくたになって帰宅。睡魔に襲われるなか、パソコンで移し替えの手続きをしていたところ、誤って円建て普通預金に移してしまった。確定した損失は約2万円。その後、さらに円高・ユーロ安が進んだが、円に替えるタイミングを見計らうつもりでいた石川さんは納得していない。「資産運用も体調管理も自己責任」と自らを戒める。
<運用「見直さず」> 激動する市場に、個人投資家はどう対応したのだろうか。アンケート調査では運用スタイルを「特に見直さなかった」との回答が最も多かった。自らの信じる運用姿勢を堅持した投資家もいる。ただ2位の「何もできなかった」と合わせ「手の打ちようがなかった」投資家は多かったようだ。10年以上の投資歴がある徳島県の会社員、橋本浩志さん(仮名、40代)は現金比率を高めて防戦に努めた。業績と株価を分析した上で株式の長期投資を実践し、震災前の金融資産は1億円に達していた。震災後は持ち株が軒並み低迷。やむなく損失覚悟で5月ごろまでに大半を売りきった。現在は株主優待を目的にした銘柄を保有するだけ。資産に占める現金比率は約80%に達する。「株式相場が落ち着いたら投資を再開したい」と、買い時を見極めている。
<一方、資産を増やした投資家もいる。> 埼玉県のファイナンシャルプランナー(FP)、内田衛さん(45)は震災直後の株式相場急落により「保有株に新築マンション1戸分(数千万円)の含み損が発生した」と振り返る。その後、夏場までの株式相場回復時に、利益の出た銘柄を売却して現金化。ここ数年、秋から年末にかけて株式相場が下落する傾向があったと判断し、安値で買うための「軍資金」作りを急いだ。秋以降、相場の下落により日本株の割安感が強まったとみて、銀行株や商社株を新規に購入した。「株価が安い時に買える原資を手元に置いておかないと、資産を増やすのは難しい」と内田さんは話す。外国為替証拠金取引(FX)でもこまめに利益を稼ぎ、年初に比べて4%程度資産を増やすのに成功した。
<「売買益で援助」> 東京都の専業トレーダー、ネコピカさん(インターネット上の名前であるハンドルネーム、女性、30代)はFXの短期売買に臨んだ。福島県で暮らす親族は震災と原発事故で不自由な生活を強いられていた。「すぐにでも駆け付けたかったが、運転免許がない自分が行っても力になれない。FXの売買益で援助したいと考えた」という。冷静にチャートを分析し、円高が進むと予測。こまめにドル売り・円買いを繰り返し、年間の利益は約600万円に達した。「家の修繕費や家電製品の購入代として、約70万円を親族に送金した」と話す。暮れも押し迫るなか、北朝鮮の金正日総書記が死去し、アジアの金融市場が大きく揺らいだ。年が明けて辰(たつ)年の12年は、個人投資家にとって、どのような一年になるのだろうか。
2011/12/26 7:00 日経 「論外」だった2011年の株式相場
日本経済研究センター主任研究員 前田昌孝
「論外だ」。ある中堅証券の社長は市場環境をこう表現した。日経平均株価が年初来で17.9%安(22日まで)とリーマン・ショックのあった2008年の42.1%安以来の大幅下落を記録しただけでなく、東京証券取引所第1部の1日平均売買代金が11、12月と2カ月連続で1兆円を下回り、「いい話は何もない」という。ただ、厳しさの背後で動き始めた長期資金の流れは見逃せない。先を見据えた大きな変化を予見しているのかもしれない。まずは今年の日本の株価動向からうかがえる構造的変化を見てみよう。上場企業を17の業種に分類して計算している東証の業種別株価指数によると、年初来で最も下落したのは電力・ガス株で、22日までで43.6%のマイナスだ。原子力発電所事故の影響といえばそれまでだが、東京電力以外の電力株も大幅下落した。日本が大量の電力消費を前提とした経済成長に依存できなくなったことを浮き彫りにしている。2番目に下落したのが銀行を除く金融株で、34.8%のマイナスだった。バブル期の1987年4月に5990円の高値をつけたこともある野村ホールディングス株が11月24日に223円まで下落したことが象徴したように、「投資から貯蓄へ」資金が逆流するなかで、ビジネスのタネすら減っている。欧州債務危機、米国のバランスシート不況と世界経済の成長率鈍化が予想されるなかで、世界の多くの企業が「守りの経営」に転じ、資金調達意欲が低下している影響も大きいと思われる。下落の第3位は鉄鋼・非鉄株。これも欧州債務危機の影響で中国、ブラジルなど新興国の経済に勢いがなくなった表れとみられる。第4位は電機・精密株だ。韓国や中国メーカーが追い上げるなか、品質やブランド力での優位性が発揮しにくくなり、業界の構造改革の遅れがコスト面での足かせになった。第7位の自動車・輸送機も円高に加え、世界需要の減退や国際競争力の低下が響いていそうだ。
株価の動向は内外の投資家が資産配分をどう変更したかを端的に示すが、一連の値動きからうかがえるのは、大企業主導のモノ作りを重視してきた日本の成長モデルの限界だ。大胆に予想すれば、サービス業や農業の躍進、終身雇用制や学歴社会の行き詰まり、既得権益の崩壊が今後の姿。日経ジャスダック平均の年初来下落率が6.3%と小幅だったのは、賢い「小」が鈍い「大」を追い越す「下克上社会」の到来を予見しているのかもしれない。
世界の変化はもっと大きい。欧州債務危機の進行が連日、話題になり、当局連合がどんな対策を講じても市場は新たな悪材料を探し出してくる。いくら深刻な材料でも、こうも続けば市場参加者は普通、飽きる。クレディ・スイス証券の市川真一チーフ・マーケット・ストラテジストは「短期的な投資資金が動いているのではなく、長期資金が欧州から引き揚げているから続くのだろう」と解説。
売れば買い戻しを伴う短期資金と異なり、長期資金は売り切りが中心だ。現に日本の毎月分配型外債ファンドは6月末から12月中旬にかけ、欧州各国の国債の保有額を2兆円ほど減らしたとみられる。欧州の国債に前向きに投資してきた中国政府が簡単に買わなくなったのも、長期資金の大きな変化。長期資金は世界情勢の長期的な変化を予想して動くだけでなく、逆に資金の流れが変化を促すこともある。
ほかにも2011年は(1)投資家が新興国の株式や債券から資金を引き揚げた(2)欧州危機を嫌った投資家が米国や日本の国債を買った(3)世界的に株式から債券への資金シフトが起きた――などのマネーフローが目に付いた。伝統的に投資を好む米国の家計が、9月末に47兆7300億ドルの金融資産の14.5%、6兆9300億ドルを銀行預金にしていたことも大きな変化だ。預金比率は06年末の11.5%から5年弱で3ポイントも上がった。
ここから読み取れるのは、成長よりも安全を重視するお金の流れだ。12年には米国、ロシア、フランス、台湾、韓国で国や地域のリーダーを決める選挙が予定され、中国でも共産党大会でポスト胡錦濤が選ばれる。通常ならば選挙を控えて景気重視の経済政策が講じられるとの読みから、株価は前年から上昇するものだが、11年はニューヨーク・ダウ工業株30種平均が前年末の1万1577ドルを上回る公算があるのを除くと、期待は薄い。
格差問題に焦点があたるなか、各国の政策は内向きになり、そのあおりで新興国は輸出減と資金引き揚げに直面して景気の浮揚力を失うかもしれない。成長エンジンを欠いた世界経済は徐々に縮小均衡を余儀なくされよう。いわば世界的なジャパナイゼーションだ。その点では一歩先を行き、耐久力を示した日本は「論外」の局面を乗り切り、「案ずるより産むが易(やす)し」の境地に入ると期待したいところだ。
