モロさん、原作者諸星大二郎は大好きな漫画家で、ファンというほどじゃないけれどある時期までは単行本が出るたびに揃えていた。
ま、寡作な人だからってのもありましたがね。
ただ映像化された作品を観たことはない。「ヒルコ」にしても「奇談」にしてもそこそこいい評判は聞くのだけれど、いや、評判が悪くはないだけにちょっと気が引けてしまう。
おそらくは映画としては楽しめるのだろうけど、と。
今回わざわざ「壁男」を、それもリリースされてすぐに借りる気になったのは、DISCASレビュアーさんのレビューを読んだから。あまり出来はよくないらしい、ならば、と(^^ゞ。
原作は諸星作品の中では比較的明瞭な部類に入る。壁男、壁の中に住む人間のような存在がいたら、というアイディアをそのまま育てていった連作。原作に使われたアイディア、ちょっとしたエピソードなどは映画にも流用されてはいるが、基本的に映画は別物。
だがそれはそれでいい。
オープニング、まったく期待していなかっただけに、これはイイと唸る。アパートなのか、ゆっくりと横に流れるカメラは部屋から部屋へとそれぞれの住人を映していく。だが映像はどこか紗がかかったようだ、そうか、これは壁男の、壁の中からの視点か・・・・
細かな演技、演出の問題は措くとして、雰囲気はある。
だがそれだけなのだ。
お話は確かに展開していく。あらすじとしては心理的な変化も描かれてはいるのだが、上っ面だけ、まったく説得力がない。
なぜだ。
鑑賞後、監督のコメントを読んだのだが(
Movie Walker 2006.10.24)どうやら原作者のファンらしいのだ、この監督。
アチキとほぼ同い年、リアルタイムで諸星大二郎の出世作「生物都市」を読み、どうやらその後も諸星作品にはまっていたようだ。なんとなくそのメンタリティはわかる。
思い入れが強すぎる。
監督にとってこの作品は「壁男」の映画化ではなく「諸星ワールド」の映画化だったのだろう。原作者の、特に不条理系短編のエッセンスを抽出しここに昇華させてやる。そんな思いが画面のそこかしこに垣間見える。
だが思いばかりが先行して、自分では制御がつかなくなった。原作に呑み込まれ、イメージだけは次から次へと出てくるのだが、肝心の表現にまでいたらない。まして心理描写にまわす気持ちの余裕もない・・・・
諸星大二郎ならそんな映像作家の話を描きそうだ。
ともあれそんな思いだけが空転した映画は、観ていて退屈でならない。最初の一時間はそれでもどうにか耐えられたが、残りの40分近くは拷問であった。
まったく原作を離れた愚作であるならまだ突っ込みようもあるのだが、結局はファン・ムービー、原作者への熱烈なラブ・レターではそれにつき合わされるこちらはいい迷惑だ。
うーん、後味が悪い。口直しになるかわからんが「ヒルコ」か「奇談」でも観るか・・・・
あ、そうか。一番の癒しがあった。
モロさんの漫画を読もう。


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