米ビッグスリーを延命させる法案が米連邦議会上院で審議されたが、ブッシュと民主党という異例の組み合わせで強力に推したにもかかわらず、共和党などの反対で廃案となった。どうなるアメリカ?
廃案になったからといって、ビッグスリーが破綻すると決まったわけではない。しかし当面の延命策であるつなぎ融資法案すら通らないことから考えると、ビッグスリーが全面的に生き残るのは無理と考えた方がいいかもしれない。
12月12日のニューヨーク証券取引市場は、ビッグスリー救済法案が廃案になったにもかかわらず、株価が下がらなかった。廃案は織り込み済みということになるが、他の救済策が取られる見通しから下がらなかったのか、それとも市場は「ビッグスリーは潰すべき」と考えているからなのか。
ビッグスリーが破綻すればその影響はとてつもない範囲と額に及ぶが、今のうちに潰しておいた方が無理に延命するより被害が小さいという見方もある。一方、軟着陸のためには少し延命した方がいいという見方もある。でも米国が背負っている「隠れ借金」は、公表されているより一ケタ大きいともいわれ、何をやっても焼け石に水というのが、本当のところかもしれない。
記事はYahoo!ニュースにも取り上げられていた「サーチナ」から。
原田武夫:ビッグスリー救済法案、合意不成立で何が起きるのか?
12月12日13時56分配信【サーチナ】
IISIAが読み解くマーケットと国内外情勢
11日(米東部時間)、米連邦議会上院は本会議を開催、下院を通過済の最大140億ドルにのぼる“つなぎ融資”を供与するビッグスリー(3大自動車企業)救済法案を審議したが、結果として賃下げをめぐる対立が解けず、可決に必要な超党派合意は成立しなかった(廃案)。これにより、振り返れば秋口より本格的な騒ぎとなってきたビッグスリーをめぐる救済策は再び暗礁に乗り上げたことになる。このまま行くと早ければ年明け早々にもビッグスリーの一部企業は資金ショートする可能性が高まったことになる。米国だけではなく、日本を含む世界各国のマーケットに対する甚大な影響を懸念すべき展開である。
金融マーケットの観点から見た時、最大の影響を被るのは米国を代表する商業銀行たちである。ビッグスリーは米国を代表する企業であり、いわば「米国そのもの」といってもよい存在だ。そのため、資金調達にあたってこれまで発行してきた大量の社債を、同様に「米国そのもの」を体現してきた最大手商業銀行たちが保有してきた経緯があるといわれる。ところが、このまま資金ショートへと向かっていく危険性が高くなる以上、ビッグスリーは最悪の場合、速やかに連邦破産法第11条に基づく「破産申請」を行う可能性が出てくる。そうなれば、当然のことであるが、これら米系最大手商業銀行たちが持っている大量の社債がいわば“紙屑”となってしまうことであろう。2008年第4四半期が佳境に入ろうとする中、さらにクレジットカード関連の証券化された金融商品に基づく巨額損失に怯えるこれら米系最大手商業銀行こそ、次なる金融メルトダウンのターゲットとなる可能性が高まっている。ヘッジファンド、あるいは投資銀行といった“越境する投資主体”たちを巡り繰り広げられてきた金融メルトダウンに対し、いわば「金融メルトダウン2.0」とでもいうべき展開だ。
その次にやってくるべき「金融メルトダウン3.0」とでもいうべき事態は、これら米系大手商業銀行に対する最終的な“貸し手”であるはずの国家としての米国そのものの資金繰りは大丈夫なのかという点をめぐって生じることとなる。そして、昨年(07年)5月末の段階で邦貨換算にして6000兆円を超える金額となっていたと報じられている財政赤字(下に解説とリンク)による負担にもはや耐えきれないと判断される場合、「CHANGE(変革)」を訴えてきたオバマ次期大統領は来年(09年)1月の就任早々、問題のいわば最終解決手段として「デフォルト(国家債務不履行)」を宣言するかどうかが焦点となってくるはずだ。
米連邦議会関係者の間ではこれまで、「ビッグスリー側が要請してきた総額340億ドルの救済はやりすぎであるものの、少なくともオバマ新政権の成立までのブリッジ(つなぎ)は必要だ」というのが概ねコンセンサスであったと現地専門紙などを通じて報じられてきただけに、ショックは大きい。もっとも、これによって自動車セクターそのものが“終焉”を迎えると考えるのは誤りだ。なぜなら、本日取りまとめられる日本の与党税制改正大綱(平成12年度)における「次世代エコカー重量税免除」、あるいはドイツにおいて2〜3週間以内に決められる「CO2排出量に応じた自動車税の導入」といった動きに見られるとおり、従来型のガソリン燃料に頼る自動車を大量生産する既存の大規模自動車メーカーではなく、電気自動車で徐々にシェアを伸ばしつつあるベンチャー企業を後押しする“潮目”が同時に見られつつあるからだ。
ビッグスリー救済案否決の向こう側に生じる「潮目」は、あくまでも複眼的な視点をもって見つめることが必要であるようだ。(執筆者:原田武夫<原田武夫国際戦略情報研究所(IISIA) CEO>)
(記事ここまで)
表に出てくる報道では、米国の財政赤字(国の借金)の累積額は、11兆ドルを超えたとか09会計年度(08年10月〜09年9月)で1兆ドル上乗せになるとか、総額日本円で1000兆円を少し上回る程度で国の規模から考えれば日本の借金より大したことがないような言われ方をしている。しかしこの記事中には
「昨年(07年)5月末の段階で邦貨換算にして6000兆円を超える金額となっていたと報じられている財政赤字」と書いてある。
「昨年5月末で6000兆円を超える財政赤字」はただの憶測ではない。米国の会計検査院が昨年11月に出した報告に、明快に書いてある。米国会計検査院は「このままではまずい」と警鐘を鳴らしたのだが、ブッシュ政権はそれを無視した。その時点で方針転換できないくらい、海外からの年貢で暮らす経済構造にどっぷり浸かってしまっていたということなのか、危機感を感じなかっただけなのか。
それより前の昨年8月、米国会計検査院(GAO)院長のディビッド・M・ウォーカー氏が、日本の会計検査院がおこなった「公会計監査フォーラム」に招かれて基調講演をしているが、その議事録(
http://www.jbaudit.go.jp/effort/koryu/pdf/gijiroku_20th.pdf)にも数字が明記してある。公表されている数字と会計検査院の数字がなぜこれだけ違うかというと、主な理由としてメディケアやメディケイドなどの公的医療保険のコストが、そのズレの多くを占めているのだという。
米国の医療保険はすべてが民間保険なわけではなく、公的保険もある。高齢者向けのメディケアと、低所得者向けのメディケイドだ。これらの公的保険は当然米財政から支出されるわけであるが、特にメディケアには表に出てこない隠れ赤字が数十兆ドルの単位であるといわれる。今後は米国でも団塊の世代(ベビーブーマー)がメディケア世代になってくるので、この赤字は急速な勢いで増え続けるだろうといわれている。
日本が抱えている米国債の総額も、本当にいくらあるかは公表されていないので、米国が倒れて日本が大丈夫かどうかは、わからない。多分大丈夫ではないだろう。しかし米国が破綻を免れることができるかというと、難しい状況になってきたように思う。この先も日本がアメリカを支え続けようとするならば、米国が破綻した時の日本への影響も大きいままであり続ける。
サブプライムローンの大手が破綻したニュースを
このブログで取り上げたのは、わずか1年8カ月前である。その時は「サブプライムローン問題を切り抜ける見通しが立ったから表に出したのだろう」と、楽観的な見通しを書いた。しかしそうではなかった。その時の記事に書いた
「借金と関係諸国からの貢ぎ物(と、時には分捕りもの)をあてにして、机上の計算の上に成り立っている米国経済」の歪みを精算しきるまでは、米国経済は縮み続けるのではないかと思う。
日本の政治も迷走してタイミングを逃しまくっているが、米国政治の迷走もかなりひどい。ビッグスリー延命法案が廃案になった途端に「じゃあ金融機関だけに使う約束だった7000億ドルからビッグスリー延命に支出する」なんてことを言い始めた。どうやってもビッグスリーがビッグスリーのままでいられるわけがないんだから、どう潰したら被害が最小限になるかを考えるべきで、どうやったら3つとも延命できるかを考える時期はずっと昔に過ぎ去ってしまったと思うんだけどなあ。
どうなるアメリカ。どうなる日本。社会保障とか言ってられなくなるんだろうか。何十年もそれ以上も時代を逆行したような、悲惨な社会状況になっていくのだろうか。