6月27日、「骨太の方針2008」が閣議決定された。小泉政権の頃の「ごり押し」と比べると、さまざまな方面に配慮した結果だろうが、どうとでも受け取れる方針となった。
記事は次のとおり。今回はロイター(朝日新聞もロイターを使っていた)。
歳入一体改革の攻防再燃は必至
2008年06月27日 19:54 【ロイター日本語ニュース】
政府は27日夕、成長戦略と財政再建を車の両輪に経済財政運営を進めるとする「経済財政改革の基本方針(骨太の方針)2008」を閣議決定した。
歳出改革では「骨太の方針2006」に則り「最大限の削減を行う」との従来方針を堅持し、歳入改革では対日直接投資拡大や国際競争力強化の観点から、法人実効税率下げの是非を問題提起。「低炭素社会」実現に向け具体的な道筋を盛り込んだのが特色。グローバルな政策課題への取り組み姿勢を示して福田色をアピールするとともに、環境税の導入検討を初めて明記した。
経済成長戦略の実現によって、人口減少下でも、今後10年間程度の間、実質2%以上の経済成長を目指す。
政府は「骨太の方針」でかろうじて与党内の歳出要望圧力をかわし、2011年度までの中期的な歳出改革の大枠を維持した。しかし、社会保障関係費の伸びを年2200億円圧縮するとの目標に対しては与党内から限界論も出ており、単年度の攻防は、年末までの2009年度予算編成作業で一段と熱を帯びそうだ。
一方、歳入改革では、政府税制調査会や与党税制協議会を尊重して踏み込まず、秋以降の消費税を含む抜本税制改革に関しては課題の列挙に終わった。2009年度改正では、道路特定財源の一般財源化や基礎年金の国庫負担引き上げに伴う安定財源確保など、待ったなしの決断が求められている。
また、公的年金基金の運用については「幅広く検討を行う」にとどめた。諮問会議のグローバル化改革専門調査会(会長:伊藤隆敏東大大学院教授、諮問会議民間議員)が報告書で提案した公的年金基金の運用収益最大化に対する結論は先送りされた。
<年末の予算編成までいくつもヤマ場、「激しい風雨」の連続か>
「今年は激しい風雨が続くのではないか」──。骨太方針の策定過程を「暴風雨」と評した大田経済財政担当相は臨時閣議後の会見で今後の展望についてこう締めくくった。
予算編成をめぐる攻防は、骨太の方針を踏まえて策定される来年度予算の概算要求基準から始まり、夏には社会保障国民会議が社会保障の給付と負担についての考え方を示し、道路整備の中期計画策定、抜本税制改革議論へとつながる。大田担当相は「年末の予算編成までいくつもヤマ場がある。それだけにこのスタートの骨太は大事だった」と繰り返した。
そのうえで、2011年度までの歳出改革の5年目となる来年度予算編成に向けて、歳出歳入一体改革の枠組みで「守るべきは守った」と強調。成長戦略では、高度人材受け入れや航空の自由化など日本経済の競争力強化で不可欠な課題に「一歩踏み出せた」と胸をはった。
<新規国債発行、抑制するのは当然>
今後の焦点は、具体的な予算編成作業において歳出改革姿勢を堅持できるかに移る。額賀福志郎財務相は09年度予算の概算要求基準の方針を7月末までに決定する意向を示し、「基本方針2008を踏まえて概算要求基準をしっかり検討したい」と語った。
財政再建路線が維持できるかどうかの一つのポイントとなる新規国債発行額について額賀財務相は「国際的な信頼・信認から考え、きちんと対応していく必要がある。財政再建を堅持するなかで新規国債発行を抑制するのは当然だ」と強調。ただ、08年度に比べて削減できるかについては「これから精査すること」と述べるにとどめた。
(ロイター日本語ニュース 吉川 裕子、伊藤 純夫)
(記事ここまで)
発表された27日の夜、大田弘子経済財政政策担当大臣がテレビ東京の「ワールドビジネスサテライト」に出演して、なんだか誇らしげに「骨太の方針2008」について解説していた。どんな質問が来ても「それに対する言い訳はこれです」と用意してあるからあんなに自信たっぷりなのかと思うが、全体をまとめてみるとどのへんが骨太なのか、よくわからない。
ビデオ録画していたわけではないので文言は正確ではないが、大体次のような発言をしていた。
・2011年度までにプライマリバランス(国の財政の基本収支)を黒字化する。そのための「骨太の方針」である。
・歳出削減を優先するが、必要なところへの手当ては財源の問題と合わせて考える。
・社会保障に関して、特に医師不足や救急医療など手当てが必要なところには、財源を手当てして早急に対応する。
・景気が停滞しては税収も伸びないので、景気対策も考える。
最近はどのチャンネルのニュース番組でも、国の財政に関して社会保障費が取り上げられるようになった。しかも、数年前まではこれしかなかった「社会保障費の増加は財政を圧迫する=悪である」という意見より、「これ以上の社会保障費削減をおこなって大丈夫なのか?」という意見が圧倒的に多い。関心が集まるのは良いことだと思う。
キャスターの小谷真生子さんが「それでは、2200億円の削減というのはできませんよね」と尋ねたところ、大田大臣は「いえ、削減はやるんです。後発医薬品の使用量が増えないとか、薬漬けの問題とか、複数の医療機関で重複して検査をするような無駄はITで解決できますし、検査入院で1週間も入院しているのは日本だけです。このような無駄は、ずっと削減努力してきましたがまだ残っているんですね。必要なところへの手当ては、また別に考えるということです。」というようなことを言っていた。
無駄を省くのは良い。必要なところへお金が回るようにするのも、当然必要である。必要なところへの手当てを、これまでは「社会保障費の増加」ととらえて、その分どこかからマイナスするという計算をしていたのではなかったか? 今回増える支出は、どうして社会保障費増とはとらえないのだろうか。そのやり方が通用するなら、これまでだって必要なところへ財源を確保することはできたはずだ。それをさせないのが小泉改革の「骨太」だったので、社会保障関係だけでなく多くの国民が苦しんできたのではなかったか。
私は日本の社会保障費は現状ですでに削減しすぎだと思っているが、「骨太の方針」というからには削減を続けるのか、社会保障費に関しては削減の手を緩めるのかを、はっきりさせてほしかった。選挙対策なのか人気取りなのか福田首相の性格なのかわからないが、何でもかんでも盛り込みすぎなのではないか。どの方向からも文句が出ないように、配慮しすぎなのではないか。「玉虫色の方針を用意しておくから、いがみ合いは現場でやってくれ」ということか。
2200億削減を堅持するなら、日本の医療をはじめとした社会保障分野は半端ではない崩壊を迎えるから、崩壊後を考えて今から行動しなければならない。削減を止めて一息つけるようにするというなら、どうやったら最低限必要な社会保障は残せるか、知恵を絞れる。しかし今回の骨太の方針のような提示のしかたでは、これまで通り真綿で首を絞めるような生殺し状態が続く懸念が晴れない。しかも、どれくらいの力なら生殺しで本当に死んでしまわないか、政府はその力加減を知らないときている。
さまざまな方面からの要望を「骨太の方針2008」に盛り込んだことによって、数値的な目標も全く見通しが立たなくなった。おそらくこれらを全部実現していたら、2011年度にプライマリバランスを黒字化することは無理だろう。それなら、骨太の方針を5年間毎年立てて実行し続けることもやめると、閣議で決めたらどうか。小泉郵政選挙を圧倒的な支持率で支持した国民を裏切ることにはなるし、国の存続も見通しが暗くなるかもしれないが。
国のプライマリバランスを黒字化することは、日本が倒れてしまわないために喫緊の課題である。公共事業費もここ数年で大幅に削減されている。社会保障費も削減すべきだという意見はあって当然だろう。しかし日本の社会保障費の実状は、細かい無駄はたしかに残っているが、ここまで20年以上にわたって削減され続けており、必要な額にははるかに及んでいない。
小谷真生子キャスターは番組の冒頭で「社会保障費は年々増えていて、5年で1兆1千億の削減といっても伸びを少し抑えるだけなんですよね」と言っていた。この発言は「これぐらいの抑制のために社会保障がダメになってしまうのなら、抑制しない方がいい」とも取れるが、「抑制するといっているが、実際には抑制されていないじゃないか」という意味にも聞こえる。(今日の小谷さんは、頭痛でもありそうな表情に見えた。いい時と良くない時の差が大きいように見えるが、体調も関係あるのか?←余計なお世話?)
日本の人口構成から見て必要な社会保障費が増大することは自明なのだから、実際の需要がどれくらいで、経済として回っていくにはどれくらいの単価を設定すればいいかを考えるべきなのではないか。どうやったら絞れるかばかり考えていたのでは、本来は活性化すべき社会保障分野の力が削がれていく一方だ。「絞らなければいけない」という呪縛が本当に正しいのか、逆に経済を萎縮させていないか、検証しながら進む姿勢を政府には求めたい。社会保障を上手に大きくすれば、経済が元気になる作用も期待できるのだから。