
病院に行ったら、日本医師会から「がん性疼痛治療のエッセンス」という小冊子が、大量に届いていた。6月11日に内田理事が記者会見で「積極的に活用してほしい」と言っていたものだ。中身はWHO方式の疼痛治療法を中心に、基本的なことだけに絞ってシンプルにまとめてある。
記者会見の記事は
こちら。
「がん性疼痛治療のエッセンスを刊行」
日本医師会「白クマ通信」 2008年6月12日
http://www.med.or.jp/shirokuma/no927.html
内田健夫常任理事は、6月11日、日医会館で、記者会見を行い、冊子「がん性疼痛治療のエッセンス」の刊行について報告した。
同常任理事は、はじめに、「がん対策推進基本計画」の重点課題のひとつに治療の初期段階からの緩和ケアの実施が挙げられており、緩和ケアに関するマニュアル作成が大きな課題になっていると指摘。そのため、日医において、がん対策推進委員会を設置し、がん医療における緩和ケアに関する意識調査を実施するとともに、厚生労働省の委託事業として、本冊子を作成したと冊子刊行の経緯を説明した。
そのうえで、同常任理事は「本冊子は35万部作成し、日医雑誌6月号に同封して日医会員宛に送付したほか、緩和ケアの意識調査にご協力いただいた病院へ順次配布している。現場で疼痛治療に当たっている第一線の先生方が編集に関わり、コンパクトかつ現場で役立つ内容となっているので、ぜひ手元に置いて活用して欲しい」と強調した。
また、同常任理事は、がん性疼痛治療について、意識を広めていきたいとの考えも示し、今後各地で研修会を開催する際は、テキストとしても使用してほしいと述べた。
◆問い合わせ先:日本医師会地域医療第3課 TEL:03-3946-2121(代)
(記事ここまで)
35万部というのはすごい数だ。日本で働いている医師の数が約27万〜28万人ぐらいらしいから、それを大きく上回っている。記事中にもあるとおり、「がん対策推進基本計画」のうちの緩和ケアの普及は、各方面で頑張っているものの、目標からは立ち後れている感じがあった。
昨年6月に閣議で「すべてのがん診療医に、10年以内に緩和ケアを身につけてもらう」ことも決定され、同日の午後には「5年以内で」に変わったが、現場で必要な「基本」をまとめたものはこれまでなかったように思う。今回の「エッセンス」は、多くのがん診療医が身につけておきたい「基本」に絞ってまとめられている。
この内容が全国のがん診療の現場に行き渡れば、かなり多くの人が今より楽にがん治療を続けることができ、「緩和ケアは末期の人だけが受けるもの」という誤解もなくなり、さらには緩和ケアチームや緩和ケア病棟、在宅緩和ケアチームなどとの連携もスムーズに進むようになるだろう。
やや惜しいなと思ったのは、「緩和ケアの新しい定義では、末期であることは受ける条件に含まれておらず、病気で困ったことが起きていれば受けてよい」ということが前面に押し出されていないことだ。がん対策推進基本計画もその元になっているがん対策基本法も、この新しい定義を採用しており、普及が不十分な現状を考えれば、しっかり書いておくべきだったのではないかと思う。
ともあれ、執筆陣も実力のある人たちを選んでおり(私は含まれていません)、身につけておくべき内容がコンパクトにまとめられている。読むのにさほど時間もかからないので、がん診療に携わる医師もこれから携わる可能性がある医師も、できれば携わらない医師も、ご一読いただきたいと思う。