厚生労働省は新薬の審査期間を短縮する方向で、体制を整備すると発表した。現状4年のものを、1年半に短縮することを目指す。
記事は次のとおり。
新薬の審査期間、短縮へ体制強化・厚労省
2008年3月26日【日本経済新聞】
厚生労働省は新薬を患者に使えるようになるまでの期間を欧米並みに短くするため、2008年度に審査体制を大幅に強化する。審査員を07年度に比べて3割増やす。申請前に薬の成分の毒性などをあらかじめ評価し、審査期間を短くする「事前評価制度」の09年度導入に向けた準備も進める。新薬を安全で早く使えるようにして患者の選択肢を広げるほか、製薬会社の国際的な競争力を高める狙いがある。
海外で承認された新薬が自国で使えるようになるまでの期間は日本が約4年なのに対し、米国や英国は約1年半。比較的長いフランスでも約2年半だ。日本は承認に時間がかかり、欧米で広く使える薬が国内では使えない「ドラッグ・ラグ(薬の時間差)」の短縮が課題になっている。 (09:31)
(記事ここまで)
混合診療推進派は「海外で使える薬が日本で使えないのは困る」ということを、推進の理由に挙げる。たしかにこれまで、体制の不備や人手不足などで日本の新薬承認は非常に遅かった。このため、日本で開発された有用な薬でも海外で先に発売されて、実績が十分できた頃にようやく日本で承認が通るということも少なくなかった。
日本の製薬会社であっても、日本での発売を前提にすると時間がかかりすぎるので、研究開発拠点を日本ではないところに置いている会社も出てきている。一種の国内産業の空洞化である。
日本の新薬承認作業は「使っていいかどうか」だけを審査しているわけではなく、「健康保険で使っていいか」も審査している。しかしその分を勘案しても、1年半と4年では倍以上の開きがある。4年はいくらなんでも長すぎる。期間短縮で審査がずさんになることは避けなければいけないが、可能な短縮に努めるべきである。
新薬が、他の国とほぼ同時に「健康保険で」使えるようになるのなら、国内未承認薬のために混合診療を解禁する必要はなくなる。
話は少しずれるが、先週土曜日の日本テレビ「ウェークアップぷらす」で、混合診療の問題が取り上げられていた。栗橋病院副院長の本田宏氏は「混合診療解禁反対」、規制改革会議の白石真澄氏は「混合診療全面解禁」を訴えており、接点がほとんどないので議論が噛み合っていなかった。それを少しでも噛み合わせるために本田氏は導入部分を独自に加えていたようだが、白石氏は全く揺らぐことなく自説を展開していて、結局議論になっていなかった。
私は、現状の新薬審査体制が続くのであれば、混合診療は部分的に解禁した方がいいのではないかと思っているが、新薬の承認が滞りなくおこなわれる体制が確保できるなら、混合診療解禁はおこなわなくても良いのではないかと考える。
混合診療解禁となれば、歯科で長年おこなわれてきたのと同じように、新しいものの保険への組み込みはされなくなり、基本的な医療でも自費診療の部分が増えてくるだろう。そうなったら、国民皆保険制度は形骸化し、金の切れ目が命の切れ目という醜い日本へ一気に加速する。
せっかくここまでいい医療体制を何とか保ってきたのに、構造改革などの美名のもとに(今となっては美名とも思えないが)良い部分まで根こそぎ壊されそうになっている。混合診療の全面解禁は、構造破壊を加速する危険が、現状では非常に大きい。
日本の医療崩壊がある程度のところで踏みとどまるためにも、的確な審査が迅速におこなわれる体制を、早く整備してほしい。