
「中央公論」2008年1月号がおもしろい。一番大きい特集が「医療崩壊の行方」。それ以外にもいくつかおもしろい記事があり、思わず買ってしまった。
医療崩壊特集の冒頭は、櫻井よしこ氏による「医療の惨状は国のあり方そのものだ」。この人はこんなに医療に詳しかったのかと思う発言が、ちりばめられている。国のあり方について一家言ある櫻井さんに、医療のあり方についても論じてもらえるとは、時代の風向きが変わりつつあるということだろうか。
その他にも川渕孝一氏の「医療費抑制が病院を殺す」や、菊地正憲氏の「搾取される常勤医を救え」など、出来のいい文章が並ぶが、私が今回の特集の中で出色の出来だと感じたのは、若手医師による匿名座談会「患者のみなさん、まずはあきらめてください」だ。
匿名で、30歳前後の勤務医が、医療についての座談会をおこなった記録になっている。精神科医、産婦人科医、外科医の3名が座談会のメンバーだ。日頃感じていることを、心おきなく語り合っているようにも見える。しかし医療崩壊の実態については、一般勤務医の平均をはるかに越える知識と知見を持っている。
さまざまな話題に関して、実体験も交えながら、適確にしっかりしたコメントを返している。理解してもらうための例え話もユーモアが効いていたり、インパクトがあったり。話題の幅も半端ではなく、医療に関する問題の主なものは、ほとんど網羅されているのではないかと思うほどだ。
これだけの話ができる若手医師を3人も集めるなんて、中央公論もなかなか大したものだ。もしかして私が知らないだけで、世の中の若手医師はみんなこれぐらいの問題意識を持って日々の仕事をこなしているんだろうか。もちろん座談会をそのまま収録したわけではなく、紙面に収まるまでに推敲したりまとめ直したりはしたのだろうが、この座談会の記録を読むだけで、医療の問題の多くを大づかみに理解できるのではないかと思う、素晴らしい内容だ。
医療以外では、民主党前代表の前原誠司氏に「民主党は生き残れるか」というタイトルで話を聞いてしまったり、林公一氏の「それはうつ病ではありません──増殖する擬態うつ病≠フ波紋」、大場智満氏による「サブプライムローン問題が象徴する覇権国家アメリカの退潮」など、気になる記事が目白押し。
歴史が好きな方には「歴史・時代小説の愉しみ」という特集もおすすめ。ざっと読んでみたが、かなり充実している。
編集後記が、雑誌の
ホームページの一番上に書いてある(これは毎月同じ)。これがまた、なかなか過激。
編集後記
★社会全体が熱狂し、繁栄を疑わず、投機に狂奔し、そして一気に瓦解する――F・L・アレンの名著『オンリー・イエスタデイ』で描き出されるrolling 20'sの世界は、私には表題通り、ほんのこの間の出来事のように思えます。もちろん、そこに描かれる風俗、事件、人々は、明らかにあの時代に特有のものではあります。ただ、破滅するまで膨張を続けるユーフォリア、いったんリスクが顕在化した途端、起きる連鎖的なパニック、破滅するまで事態の本質が把握できない当局など、この二〇年間の日本の姿がフラッシュバックします。そして、同じ光景を今、アメリカに見ることが出来ます。
★前FRB議長のアラン・グリーンスパンは、一九九六年に、「根拠なき熱狂」と当時のアメリカ市場に警鐘を鳴らしました。が、アメリカはその後、さらにバブルを膨らませ続けました。空けた穴の大きさは日本なみ。歯車の逆回転が始まったら、長期化する事も日本のオンリー・イエスタデイに見るとおりです。
★アメリカは七〇年代から明らかにピークアウトが始まっています。水面下の衰退を、金融技術を駆使した「借金」でバブルを作り続けて埋めて来ました。しかし、このシステムも信用が傷つけばそこまで。夢は必ず覚めます。アレンの著作には、覚めた後も生き続けていかなければならない人々の現実も描かれています。もし過去に学ぶ力のある人なら、そろそろアメリカの世紀の終焉に備えるべきなのかもしれません。(間宮)
「医療崩壊っていうけど、ほんとにそんなものあるのかな?」と思っている人や「医療崩壊の実態はどうなっているのか、何かわかりやすい読み物はないか」と思っている方には、お勧めします。