なな先生というハンドルネームの医師ブログ「ななのつぶやき」に、
「犠牲」と題する同僚医師の急死の話が載っていた。読んでいて胸が詰まる思いがした。
記事のコメント欄(下の方)を読んでいただくとわかるが、同僚や身近な医師を亡くしている医師は、かなり多い。なな先生の場合は、二人とも30代。通常であれば死ぬことなんて考えつかない年齢だ。心を残さず死ぬことができる年齢ではないが、ご冥福をお祈りします。
病院に勤める医師の仕事の実態は、あまりよく知られていない。昼間働いているのは当たり前と見なされる。その上、時間外に受け持ちの患者さんの具合が悪くなったり、専門としている分野の急患が来たりすれば、駆けつけて手当てをするのは当たり前と考えられている。さらに、救急外来のある病院であれば夜間外来をやるのが当たり前と一般の人は考えるが、ほとんどの病院では夜間働いているのは専門の医師ではなく、昼間も働いていた医師である。
労働基準法では認められない働き方であるが、当直中は診察をせず睡眠は取れていますと、病院は労働基準監督署に報告する。そうしないと医師が確保できずに病院が潰れるからである。また、急患や急変などで駆けつけるのは医師個人の義務感によるものであり、病院は強制していない形になっているはずである。たしかにそうかもしれないが、その義務を放棄してしまったら、今の医師数で日本の医療は成り立たない。
それでも医師は、患者さんが存在する限り限界を越えても働き続けなければいけないだろうか。患者さんの命は地球より重いかもしれないが、医師の命はそれより軽いだろうか。なな先生のブログには、亡くなった先生とは
「過労だけは気をつけようね。壊れる前に、逃げようね」と、お互い言い合っていたのに・・・と書かれている。国が医師数を抜本的に増やす気がないのであれば、医師は「患者さんのために頑張る気はあるけれど、過労死を覚悟してまで頑張れといわれたら無理だ」と答えるしかないだろう。
日本小児科学会は、勤務医の過重な勤務に歯止めをかけるため、日本全国で進められている集約化・重点化された病院において、週58時間以内に労働時間が収まるようにする方針を打ち出している。
参考:江原朗「
小児科医と労働基準」
http://pediatrics.news.coocan.jp
この小児科学会の主張も受け入れられないようであれば、日本国は「医師一人の命は、その他の人の命よりも軽い」と考えていると受け止めざるを得ない。医師は過労死の心配などせずに、必要な医療を思う存分提供できるのがまともな国のあり方である。それから大きくかけ離れてしまって今後さらに離れる方向に向かいつつある日本の医療に、みんなで歯止めをかけなければ、医療にも未来はないし、国民生活の安心もなくなってしまうだろう。