キノコを原料にした薬っぽいカプセルを「がんが治る」などと宣伝して売った人たちが逮捕された。再三書いているが「これを飲めばがんが治る」という万能薬・万能食品はない。
記事は次のとおり。
がん効能宣伝、無許可販売…容疑の2人逮捕
キノコ原料 健康食品
(2007年9月6日 読売新聞)
「がんの抑制効果」などと効能をうたって、キノコを原料にした健康食品を無許可で販売したとして、神奈川県警生活経済課と横須賀署は6日、通信販売会社「テレビショッピング研究所」(東京都大田区)の元役員莫慶(43)(同区山王)と社員高橋伸歩(34)(同区下丸子)の2容疑者を薬事法違反(無許可販売、貯蔵)の疑いで逮捕した。
調べによると、莫容疑者らは昨年7月〜今年5月ごろにかけ、静岡県内の無職女性(34)など15人に、医薬品に当たる健康食品「まるごとはたけしめじ」を、許可を受けずに販売するなどした疑い。
同社は2004年2月〜今年5月、この健康食品を約4万人に販売し、16億円の利益を得ていたとみられる。県警は同容疑で元社長高橋正樹容疑者(58)の逮捕状を取り、行方を追っている。
同社は元プロ野球選手や歌手などを使って、テレビ、新聞などで宣伝していた。同社はすでに販売を中止している。
(記事ここまで)
キノコを乾燥させて粉にしたものを売って、16億円の利益である。総売り上げは24億6000万円とみられている。利益率65%というだけで、まともな商売ではないと判断する十分な根拠となる。
このような商売は、弱っている人の気持ちに上手につけ込むノウハウを持っている。病気を抱えていれば、体だけでなく気持ちも弱くなり、頼りになるものを探し求める。西洋医学は自らの力の限界をわきまえているので「これ以上は治療のしようがありません」とか「治せる治療はありません」と言わざるを得ない。そのような時に「これを飲めば治ります」と言われたら、そちらを頼りにしたくなる気持ちは十分わかる。
しかし客観的に見て「西洋医学に見放されても、これを飲めば確実に治る」という物質は、現実にはまだない。私は500人を越える進行がん以降のがん患者さんとつきあってきた。そのうちの半分以上の人は「がんに効く」「がんが治る」という物質を飲んでいた。しかし広告通りの力を感じたものは、いまだに一つもない。
広告を見てもホームページを見ても、これらの健康食品・機能性食品などは「頼りになります」という書き方をしている。このような書き方は優良誤認で不当表示防止法違反の疑いがある。「がんが治る」と書けば薬事法違反である。この広告に乗せられて正しい治療から遠ざかれば、改正健康増進法違反である。
怪しい業者のホームページや書籍には「西洋医学の医師は、自分が治せなくて悔しいから、私たちの治療を認めないんだ」というような中傷が、よく書かれている。たしかに治せないことは悔しいが、だからといって有力な治療が他にあっても認めないほどちっぽけながん治療医は、日本にはまずいない。そんなことを自分たちが認められない理由と思っている方が、よっぽどちっぽけだ。
西洋医学では、非常に地道にコツコツと、病気を治す方法を積み上げてここまで来た。途中で画期的な治療法や薬剤の開発もあったが、すべてのがん患者にすばらしい恩恵をもたらす画一的な方法は、まだ見つかっていない。
キノコでも何でもいいから「これを飲めばがんが治ります」というものを、本当に見つけて欲しいものだ。そうなれば日本では「がん治療医」が不要になり、現在深刻になっている医師不足が大幅に緩和されるだろう。それができる自信がないなら、病人の弱みにつけ込むこのような商売は、一刻も早く淘汰されるべきである。