木村紀子の「原始日本語のおもかげ」(平凡社新書)を読んだ。古い日本語というと、普通奈良時代にできた古事記や万葉集の中のことばを考える。それより古いことばは記録がないため、分からない。
しかし、太古の日本語はことばが多様な声で賑わっていた長い長い時間の後文字に書き表わされたはずである。この本はそういう古いことばの起源を考える。
クツを履くようになってからハダシという言葉が生まれた。サルやイヌがハダシだとは誰も思わない。クツという言葉ができたのはいつごろからだろうか。
興福寺の至宝「阿修羅像」の足に草鞋風のサンダルのようなものをつけているという。そういう特別の存在がクツを履いていたとも考えられる。
「千の風になって」という歌の中で「ナル」という言葉が使われるが、人間は「大人にナリ、夫婦にナリ、老人にナル」と延々と姿を変えていく。この「ナル」という言葉は古くからある言葉である。
「こうナリたい」は成りゆく先を希求するが「こうアリたい」は今の状態を希求する。この「アリ」と「ナリ」の用法は太古から変わらず使われていたようだ。
この種の興味深い記述に満ち満ちている。ぜひ一読をすすめたい。

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