近世の薩摩藩内で生産された磁器を「薩摩磁器」と総称している。ここ十年ほどで薩摩磁器窯跡の発掘調査が進み,消費地遺跡の出土磁器から薩摩磁器の抽出が可能になってきている。
しかし出土磁器の多くを占める肥前磁器と,明確に区別する「基準」が確定し得ているか,というと,残念ながら,その段階には至っていない。
薩摩磁器研究の現状の一端を模式化すると,以下のようになる。
つまり窯跡で確認されている薩摩磁器と,共通する素地や釉薬,器形,絵柄などを持つ資料については,消費地遺跡から「薩摩磁器」として抽出が,ある程度可能である。また窯跡で確認されていないが,窯跡資料と類似する資料については「薩摩磁器か」と保留付きとなる。
しかし現在のところ「肥前」あるいは「肥前系」などと呼んでいる消費地遺跡出土の磁器の中に「薩摩磁器」が含まれている可能性も十分にある。それらは「薩摩磁器」として同定するための「母集団」がはっきりしていない類の資料である。
そのひとつが色絵などの高級品である。窯跡から出土する資料は,量産品が圧倒的に多く,高級品は少ない。平佐においても,かなり踏査したが,色絵製品の採集は数点にとどまる。また白磁も肥前との区別が難しい。
それゆえ,消費地遺跡出土磁器に占める「薩摩磁器の比率」という点を議論する場合,現段階における「薩摩磁器」の同定が,このような研究状況にあることを念頭に置いておく必要がある。