ピンク映画を皮切りに瀬々敬久監督作品などで脚本を主に手掛ける井土紀州の98年作品。福岡では7年前に自主上映されたのだが、その際に同作を観た福岡市総合図書館映像ホール「シネラ」のスタッフが、8ミリが原盤である本作を守るため(?)16ミリブローアップを行なったと云う。しかも、スタッフにも協力を依頼したらしく、8ミリ原盤からではクオリティが低いと思われる音声も、(フィルムへのダビング前の)音原盤から新たに起こしたのか、十分にクリアなモノであった。
余談だが、「鉄男」などで有名な塚本晋也監督は15年以上前から「8ミリであっても、音声原盤を別にしっかり作っておけば、8ミリ→テレシネ→キネコ16ミリというやり方で十分鑑賞に堪えうるブローアップが可能」と言っていた。本作はまさにこの好例であろう。
ちなみに今回、交通アクセスも決して良くなく、平日の昼間の上映にも関わらず、30人位は客が入っていた。
さて、映画であるが、中古レコード屋の店員であり、作詞家を目指す平山が、店の仕事で古レコードの引き取りに行く所から話は始まる。
そのレコード群を手に入れた事から始まる不可解な出来事で、平山はやがてある目的に向かって走り始める。
簡単に記せばこんなストーリーであるが、はっきり云えば、後半は物語性よりもイメージ性が増してくる。それでも圧倒的な映像の説得力で一気に90分弱の物語を観る事が出来る。
映像もいい。16ミリや、ましてはビデオでは出せない独特の色調、室内シーンもイイ感じの照明が作品世界にマッチしている。井土監督が8ミリにこだわったのも分かる気がする。

DVDにもなっていないが、観る機会があれば是非観て欲しい。