「マリア様がみてる 大きな扉 小さな鍵」、感想です。ネタばれを含みますので、注意してください。
これまで、「仮面」のせいでよくわからなかった瞳子の心情の一部が、明らかにされました。とりあえず祐巳への誤解はとけ、一旦絶望の底に落ちたものの、一筋の希望が見えてきた、ということろで、終わっています。祐巳との関係が一段落するまでは、もうちょっと巻数がかかるか。
今回特にいい味を出していたのは、乃梨子です。最初の祐巳とのやりとりも、中盤で祐巳の瞳子に対する気持ちを聞いたシーンも、そしてもちろん最後のシーンも。「マリア様がみてる」シリーズのなかでも屈指の名シーンが、凝縮されています。白薔薇姉妹が好きな人には、80ページ〜85ページの志摩子とのやりとりは鼻血ものでしょう。
いや、もう、「未来への白地図」以降、名シーンの連続ですよ。どのシーンが一番好きかなんて書くのが野暮ってなものです。どれも捨てがたい。
キャラクターたちの「違和感のない」心情、それを細密に描写する、決して詳細ではないけれど的確な文章。作者の筆力に、脱帽です。
特に「子羊たちの休暇」以降、登場人物たちの関係が一気に安定化し、その状況が長らく続いていたため(瞳子と祐巳はゆるやかな接近を続けていましたけど、奈々は登場自体がかなり遅かったし、可南子は明らかに主線にからんでくるような登場の仕方じゃなかったし)、"無理矢理引き延ばしている"という批判が一部でなされていましたけど、今となっては、それはちょっと的はずれだったのかな、と思います。「子羊たちの休暇」から「特別でないただの一日」までの平和な描写があったからこそ、今の緊張感が、登場人物たちの行動が、説得力を持つのだと思います。
乃梨子と瞳子の友情にしたって。瞳子と祐巳の関係にしたって。「チェリーブロッサム」以降の長い時間があるからこそ、現在の状況に至っているのです。そこを省略されちゃ、たまらない。
最後の乃梨子と瞳子のシーン。なんという心憎い友情。このシーンだけで、ここまで「マリみて」を読んでいてよかった。
さて。瞳子の残された謎や、今後の展開も気になりますけど、それ以上に気になるのが、柏木さんの意中の人。今回も柏木さんは非常にいい働きをしていて、評価も著しく上昇中なんですけど、彼が本当に(恋愛対象として)好きな人が、わからない。というか、「大きな扉 小さな鍵」を読むまでは、祐巳かな、と思っていました…が。祐麒っていうかんじもしないんですね。もちろん祥子は違うし、聖も違うと思います。江利子もそんな感じじゃない。清子もたぶん違うでしょう。今までの記述では、そんな感じは受けませんでした。
となると、他に考えられそうなのは、誰か。残るは、蓉子か、それとも…瞳子?
柏木さんは、自分についてはなかなか本当のことを語ってくれないのでわかりにくいのですが。素直に考えると、作中で、彼が一番ストレートに愛情を示しているのは。彼女が傷つけられたことに、自分を押さえられなくなるほど激怒したのは。
瞳子に対して、なんですね。
でも、瞳子への態度は、愛する妹へのそれ、ともとれます。あの瞳子への入れ込みようは、瞳子が柏木優の実の妹だったとしても驚かないほど。
他に、柏木さんと一緒に出てきた人って、いたっけ?