〜 雨宿り 〜
賢者ルシエンの予言を聞き、クレイヴはゴリガンとセレナを伴ってクレイトスに向かおうとしていた。引っ切り無しにクレイヴに話しかけているセレナに苦笑いをしつつそれを見守るゴリガン。そうして言葉すくなに相づちを打つクレイヴ。そんな様子でアトラ山を降りきった頃に、始めてクレイヴが自主的に話し始めた。
「…、セレナ。大会はすぐに始まるのか?」
「まだ少しだけど時間はあるわ。…それがどうしたの?」
彼を見上げつつ答えるセレナは本当に不思議そうな顔をしていた。問われたクレイヴはデュナンのある方向に顔を向け、言う。
「大会に出る前に、ブックの調整をしてそれを少し試してみたい。ゴリガンに相手をして欲しいんだ。」
相変わらず淡々とした話方だが、ゴリガンもそれには慣れているので特に気には止めない。
「相変わらず慎重ですな、クレイヴ殿。私で宜しければ、お相手いたしますぞ。」
彼の言葉にゴリガンはやんわり微笑んで答えた。クレイヴはゴリガンの同意を得ると今度はセレナの方に向き直った。
「クレイトスに行く前にデュナンに寄りたい。…構わないか?」
その台詞にセレナはにっこりと笑い答えた。
「勿論、良いわよ。そうと決めたらデュナンにしゅっぱーつ!!」
そうして三人はデュナンに向かうことになった。特に何事もなく、もうじき目的地に着くだろう、と言う所でアクシデントが起こった。
「ねぇ、なんか雲行き怪しくない?」
「先ほどまではそうでもなかったんじゃがのぅ…。この調子だとデュナンにつく前に一雨来そうですな。」
セレナとゴリガンの言葉につられたクレイヴは空を見た。確かに先ほどまでと変わって今にでも雨の降りそうな空模様になっている。
「…降ってきたな。」
ぽつり、と頬に当たった雨粒をぬぐいクレイヴが呟いた。そのクレイブの手首をつかむとセレナは走り出す。
「そんなこと言ってる場合じゃないって!取り合えずあの木の下で雨宿りしましょ。」
クレイヴはセレナに逆らわずゴリガンを引っつかむと近くにあった木の下に駆け込んだ。
「やれやれ。何とか間に合いましたな…。」
三人が木の下に辿り着いた後、雨は本格的に降り始めた。仕方なく、その場に立ち続ける三人。
「あーあ、やっぱり少しはぬれちゃうなぁ。」
しばらくしてセレナが呟いた。葉の隙間から落ちてくる水滴で服は多少なりともぬれてしまう。
「ぬれるのは嫌か?」
「そりゃあ、ね。風邪ひくかもしれないじゃない。」
その台詞を聞いて「なるほど」、と頷くクレイヴ。そうして、自分のマントをセレナにかけた。
「それでも羽織っているといい。」
驚くセレナに彼は一言そう述べる。濡れる事を気にしていたセレナを気遣っての行動だ。それを理解するとセレナの顔が驚きから見る見るうちに笑顔に変わっていく。
「ありがとう!」
素直に真っ直ぐ自分を見つめて感謝の言葉を口にするセレナに、クレイヴもほんの少しだけ笑顔を見せた。
(無表情で言葉もそっけないけど、やっぱりクレイヴは優しいな。それに初めて笑ってくれた。)
雨は好きじゃないけど、今日だけはその雨に感謝しても良いかも。そんな事を思いながら、セレナは横に立つ青年の横顔を柔らかな表情で見つめた。
□あとがき
久しぶりの小説更新です。そうして初のセカンド小説。クレイヴとセレナのほのかならぶを目指してみたつもり…。というかセレナが良くつかめずエセっぽいかもしれません。(大汗)そうしてゴリガンの出番、後半は殆どなしという。クレイヴの小説のネタはあるのにカイリのネタはさっぱり。次は何時になるかは未定ですが、またクレイヴをネタに小説を書きたいと思います。