朝、ガァ子が死んでいたらしい。
小学校で飼育されていた、アヒルのガァ子である。
息子が入学する前から飼われていて、その後、飼育栽培委員を
やり続けてきた息子とは、かれこれ4年以上の付き合いであった。
飼育小屋の掃除、餌やりと、ずっと面倒を見てきた息子に
とっては、ショックだったろう。
卵も産まなくなって久しかったが、寿命を全うしたらしい。
カミサンの話だと、学校から帰ってきて、しばらく玄関で
佇んで、様子がおかしかったようだが、自分なりに気持ちが
少し落ち着いたのか、夕食時にぽつぽつと話をし出したようだ。
足が少し悪くて、病院へいった事。
昨日は、普通に元気であった事。
死んだ時は、目も開いていて、いつもと変らない姿に見えた事。
飼育委員のみんなは、泣いていた事。
泣いても、ガァ子が帰って来る訳じゃないので、自分は
泣かなかった事。
保健所の人が引取りに来た事。
先生がガァ子の羽を一枚、土に埋めて、お墓を造った事。
ぽつぽつと話す中で、涙ぐんでいたようだ。
家に帰り、カミサンから話を聞いて、正直、自分もショックだった。
一生懸命世話をする息子のことをガァ子もわかっていたのだろう。
掃除の時は、息子の姿が見えると、ちゃんと小屋を出て、
掃除が終わるのを待っている。
とても懐いていたようで、休みの日に学校のそばを歩いていると、
息子の声を聞き分けて、「ガァガァガァガァ」と呼びかけていた。
「ガァ子!静かにしいや。また明日な!」と息子も声を掛けていた。
と、ガァ子も鳴き止むのである。
時折、息子から話を聞いていた自分でさえ、感慨深いのに、
ずっと世話をしていた息子は、さぞかし、悲しい、淋しい思いで
あろうが、じっと我慢していたようだ。
「そっかぁ、ガァ子は死んじゃったか。」
「きっと、お前たちが卒業して、お別れになるのが
嫌だったんやな。」
「だから、ちょっと先に逝ってしまったんかもな。」
二言三言、声を掛けると、うつむいていたが、涙がこぼれていた。
うん。その、人としての素直さと、優しさをこれからも大切に
持ち続けて欲しい。
ガァ子は、お前と出会えて、本当に楽しかっただろうし、
幸せだったと思う。
そして、幸せなまま、先に逝ったのだろう。
口には出さなかったが、誰よりも息子が、小さな胸を一杯に
していたことだろう。
卒業を目前にした、息子の成長を見て、私も胸が一杯であった。