2007/3/23
「快楽の記憶」
いわゆる、ぬか漬けの状態なのであろう。
どっぷりとアルコールに浸かってしまった脳は、その後、
アルコールが抜けたとしても、元の全く正常な状態に
戻る事はない。
限りなく、正常な状態への回復は見込めるが、完全リセットは
望めない。
そこに大きな落とし穴がある。
生命活動の中枢とはいえ、脳自体は物理的運動をする
わけではなく、認識、思考、判断、記憶、指令、反射、
抑制、統合といったような、伝達系の働きをしている以上、
肉体上の全ての情報を掌握していながら、全ては間接的となる
経験を蓄積していく点で、脳は肉体と精神の座であるといえる。
その脳が、アルコールによる、それ自体の麻痺状態という
直接的な快楽状態を実経験として記憶してしまった時、
その記憶を消す事は、不可能である。
酩酊の中で、アルコールに浸かっていることの快楽を経験し、
その状態を常に求めるようになると、その構造上において
生じる葛藤と抑制という、コントロールを自らが放棄して
しまう。つまり、制御部が麻痺する事で得られる快楽を
維持しようとするがために、その快楽、つまりアルコールを
至上のものとし、生命活動を含めた他の一切を省みない
状態となる。
肉体が悲鳴を上げ、拒絶しようとも、アルコールを体内に
入れようとするのは、その、脳の快楽至上主義の所以である。
この経験を持つ脳に対して、その快楽を奪い、麻痺状態を
正常化させて、しかもその状態を継続的に維持していく
という事は、考えれば至難の技である。
初めからお酒の飲めない人の脳は、この経験も記憶も
持たないが故に、我々の断酒とは全く異なる状態である事は
自明の理である。
お酒を飲まないという外見上の事は同じであるが、快楽を
知らずして飲まないのと、快楽を経験していながら、
飲まないというのでは精神上では、全く隔絶してしまって
いるのである。
脳の実経験による、消えない記憶を潜在的に持っている
我々が、それを制御しようとする事は、並大抵の事では
ないと肝に銘じるべきである。
そして、断酒継続の日々の中で、その制御能力の向上に
努める事を止めてはならない。
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