La vie antérieure
J'ai longtemps habité sous de vastes portiques
Que les soleils marins teignaient de mille feux
Et que leurs grands piliers, droits et majestueux,
Rendaient pareils, le soir, aux grottes basaltiques.
Les houles, en roulant les images des cieux,
Mêlaient d'une façon solennelle et mystique
Les tout-puissants accords de leur riche musique
Aux couleurs du couchant reflété par mes yeux.
C'est là que j'ai vécu dans les voluptés calmes,
Au milieu de l'azur, des vagues, des splendeurs
Et des esclaves nus, tout imprégnés d'odeurs,
Qui me rafraîchissaient le front avec des palmes,
Et dont l'unique soin était d'approfondir
Le secret douloureux qui me faisait languir.
Charles BAUDELAIRE (Les fleurs du mal)
Vita anterior
diu incolui sub vastis porticis
quos marini soles mille ignibus tingebant
eorumque altae pilae rectae et augustae
speluncis basalticis similes vespere faciebant.
aestus caelorum simulacra volventes
sollemniter ac mystice miscebant
concentus omnipotentes eorum musices contextae
solis occidentis ab oculis meis repercussi coloribus.
illic in placidarum voluptatum medio vixi
inter caelureum et undas et splendores
nudosque famulos odoribus imbutos
frontem palmis refrigerantes
quibus una erat cura gravare
acerbum arcanum quo tabescebam.
先の世
我の永らく暮らせしは巨大なる柱廊のもと
海の陽は其処を千なる火にて染めあげ
真直ぐにて厳かなりし豪壮の柱とともに
夕されば玄武の洞の趣きをなす
寄する波は、空の姿を転がしつつ
厳粛にして神秘なる方法により
そが豊穣の音楽の全能なりし和音をば
我が眼の宿す落陽の色のうちへと溶け込ます
静かなる逸楽のなか我の生きしはこの地なり
我の巡りにはべりしは、青き色、波、輝きと
かぐわしき香りに満てる裸体の奴隷
棕櫚を手に我が額さます者なれど
そが唯一の務めとは、我を悩ます
哀切の秘密を深むることのほかなし
この詩を最初に読んだのはたしかSans Frontiere第3巻という教科書。そのころ通っていた飯田橋の日仏学院の授業で使っていたものです。この教科書は単なる語学の教科書であるのにもかかわらず、ボードレールのほか、ドュベレーやマラルメがそのままでてくるという、考えてみればかなり高尚なもの。でも、そのおかげで、世の中にたった14行でこんなにも神秘的な光景を描写してのける人間がいるのだということを知ることができました。
そのとき教わっていたのが、南仏出身の某「山形」(本人の弁)先生。この詩を読んだ際、先生が何気なく
アングルのオダリスクを引き合いに出したのですが、自分のなかでぞくっとするぐらいにイメージがぴったり合いました。それまでアングルに特に関心を抱くことはなかったのですが、この詩と組み合わせることでオダリスクだけは、自分にとって非常に特別な存在になったように思います。
羅訳はヘクサメーターあたりの韻律に合わせて作れればよかったのですが、自分には到底無理なので、無粋な散文になっています。また、和訳もつけてみましたが、つい文語訳になってしまいました。岩波文庫の鈴木信太郎訳の読みにくさについて悪口をさんざん言ってきたのにもかかわらずです。こういう詩は、少し謎めいた感じがあった方がいいというのと、文語の方がリズムをそろえやすいという点あたりを理由にあげておきましょう。もっとも、オリジナルのフランス語は、ごく普通の口語で書かれているのではありますが。
なお
BIBLIOWEBにこの詩についての非常に詳細な注釈があります。また、この詩に関しては英訳を
こちらで読むことが出来ますが、その数なんと5種類。また、
オリジナルの朗読も聴くことが出来ます。さすがのスーパースター振りです。
ところで、シャルル・ボードレールをラテン名にするとどうなるのでしょうか。Carlus Baldelariusあたりでしょうか。でもなぁ、カルルスとかいわれると、「
登別カルルス」なぁーんてゆぅ入浴剤をつい思い出してしまうのが何とも・・・。
5/20 追補 当初ここに掲載していた自分の羅訳を
Google groupに投稿し、添削を求めたところ、返ってきたのが上述の訳です。はっきりいってこれはもう、添削というより、新たな訳です。訳者はOncle Fétide氏。自分の訳の投稿後1時間もたたずして、新訳を返信していただきました。ただ、僭越ながら自分で手を入れ直したところが数箇所あります。